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尺八を携え歩いた四国88箇所遍路  15 情熱の歌姫  H16/9/26 UP
              
六万寺  志度寺

 八栗寺からは、車道をテクテクと下りて行き、八栗寺方面を望む途中に「六万寺」へ向かう小さい別れ道があります。

 六万寺は、そんなに大きい寺ではなく、どっちかというと村の小さいお寺という感じで、寺前に案内板が無かったら行き過ぎっちまうような寺でした。

 しかし、案内板を読むと源平の歴史的云われが有る寺のよおでんなぁ。

 六万寺から志度寺へ向かって歩いてると、途中の住宅街付近で方向がわからなく迷子になって、しょうがないから、タンボ道へ下りて車道へ行きました。

    六万寺への遍路道 屋島が見える     六万寺への遍路道
    六万寺    六万寺 境内
六万寺
 一巡時の夕方、志度寺の本堂で参拝しようと呼吸を整えた後、尺八を構えようとした時、納経所の窓からバサマが
「ケンテキするのか?」と大声で言います。

 はっ?・・ケンテキ?・・
 献血なら、ここ最近やっておらんが・・・叱られとるんかな?

と思ってボェッ〜とバサマの方を見てると、もう一度同じ事を言うので、やっと「献笛」だとわかりました。

 尺八を寺で吹くのを「献笛」というのか、どおかわかりまへんでしたが、説明するのもメンドウなので 
「はい、そうです」と答え、参拝が終わるとバサマが手招きして呼び、「本尊様にお供えした、お下がりだ」と言って落雁のお菓子をくれました。

 後で食べてみると、ちょっと線香臭い味がしたなぁ。
 まぁ、それがアリガタイのかもしれんが・・

 二巡時、五重塔の所へ行ってみると、3人の遍路が座って托鉢しています。

 普通、寺で托鉢する場合、人の出入りが多い門付近で托鉢した方が貰いを多いのですが、この遍路達は、あんまり人が来ない目立たない所で托鉢してます。

 以前、遍路Kさんが
 「寺でやる托鉢は目立つ所でなく、人が来ない目立たない所でやるのが本当だ。
 本当に信心の有る人は、必ずそおいう人を見つけ出す。
 また、そおいう人からの布施でないと価値がない。」


と言ってたのを思い出し、今まで寺をウロついていて、そおいう人は見た事がなかったが、ここで初めて、「ううむぅ・・今も、そおいう人が居るんだなぁ」と思いました。志度寺 境内

 三巡時、山門付近へ来ると微かに笛か尺八の音が聞こえます。

 おっ!!・・これは、ヒョットすると・・・と思い行ってみると、本堂下で一人のジサマが尺八を吹いてましたが、すぐに曲が終わっちゃった。

 話をすると、車遍路しながら飛び飛びに巡っており、流派所属会等を聞くと一巡時に出会った虚無僧と同じ会派です。

 虚無僧の名前を言うと、その人の弟子だと言い・・おぉぉぉ、奇遇でんなぁ。

 大師堂でも吹くと思ってたが、吹かずに行っちゃった。
 お手並み拝見して、ゆっくり聞きたかったんだけどなぁ。

 二巡目の夜は、郊外の駅で車野宿しました。志度寺 境内

 駅付近に店は無く、建て売り住宅街だけが閑散としており、夜中にはスケボーをする人が「ガラガラ・・」と音を立てて遊んでます。

 駅舎はガラス張りでベンチもあり、ヒマだったので尺八を吹いてみました。

 これがガラスで反射するのか、ビックリするほどもんのすごく響き渡り、ちょうど風呂場で歌うとエコーが掛かってる感じで、我ながら上手に聞こえるんですわ。(^O^)

 たまに汽車が入って数人降りてきますが、気にせず吹いてると、一人のネエチャンがウロウロして側のベンチに座ります。

 最初ウロウロしとる時は、トイレでも行きたいのかと思い、そいでもってベンチに座った時は、これから彼氏と待ち合わせでもしとるんかな?と思ってました。

 吹いてた曲が終わると、突然パチパチと拍手してくれ話しかけて来ました。志度寺 五重塔

 聞けば、自分は音楽大の声楽を卒業したが、その道に進もうとしても難しく、結婚式場などでアルバイト的に歌っているが、それはボランティアみたいものだ。

 今は観光バスの添乗員をしているが、まだ歌への夢と希望を持っている。

 ううむぅぅ・・・音楽で身を立てるのは難しく、よっぽどの才能とか、人脈・運もないとなぁ。

 そのうちに
「あなたの尺八と、私の歌と一緒に組んでライブをやらないか」と持ちかけて来ます。


 
「えっ?!・・ワシは、そんな華やかな世に出るような人物ではごぜぇません。
 他に、もっと上手な適任者やプロの方が居るでしょうから、その方とやんなせぇ。」志度寺


と断ったんですが、
「いえ、あなたと一緒に是非やりたい・・・」と、一生懸命説得し始め、ネバります。

 
「ワシは今さら、この年になって舞台に出演して他の人に気を使ったり、組織に入ってシノゴノ言われるのもイヤなので、今のまま束縛されずに気儘に吹いてる方が気楽です。」

と断ったのですが、このネエチャンはコンジョが有り、なかなか引き下がらず、
「それでも・・・」と、なおもガンバリ続けます。

 話しをしていて情熱が有るというのか・・

 今も夢を棄てきれず、その夢に向かってまっしぐらに突き進みたいというのか・・そおいう真剣さが、ヒシヒシと伝わって来ます。志度寺

 ワシなんか、もう枯れ果ててしもおて・・・「夢」や「情熱」という単語は、いつのまにか、どこかへ消え去っちまった。

 このネエチャンと話して、ホンマにシミジミと「情熱」という単語を思いだしたなぁ。

 まだ話したそうにしてましたが、若いネエチャンが遅くなると親が心配すると思って帰しました。

 翌朝、早く起きるとネエチャンの車が駐車場に置いてあり、もう仕事へ行ったんでしょう。

 三巡目に行った時も、ネエチャンの車が駐車場に有り、今もまだ夢を持ち続けとるんやろおか?

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