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H16/11/5 UP逆打ち「長浜」付近、四国遍路


逆打ち「大麻山卯辰」越えと「白鳥道大阪」越えの「結願」

大麻山卯辰越え

大麻比古神社

 三巡時は逆打ちをして、「大麻山卯辰」越えをしました。

大麻比古神社・参道、四国遍路



 1番「霊山寺」脇の広くもない道を行くと、やがて大麻比古神社に向かう大きな参道に出てフラフラ歩いてると、通りすがりのオバハンが「結願したんですか?」と声をかけてきました。

 結願したので、この神社にもお礼参りしに来たのだろおと思ったのでしょう。

 大麻比古神社の入り口は、ちょうど工事中で少し遠回りして境内に入ると、大きい神社です。

大麻比古神社・境内、四国遍路



 早朝に行ったので、緑の袴をはいた巫女さんが数人境内を掃いていました。

 参拝して国道に出て歩いてると、向こうから来た車が止まり「ドイツ館は、この先か?」と聞いて来たので、神社の近くにドイツ館が在りましたので、行ってませんが「へい、さようです」と答えておきました。

 車道のS字カーブをエッチラ・・オッチラ・・・

 途中で産業廃棄物が置いてある所から、野良犬らしいのが三匹ほど遠くから吠えて走ってきます。

卯辰越え、四国遍路


 無視して歩き続け、犬がこちらへ来るまで距離があったの、犬も諦めてそれ以上は追いかけて来なかったけれど正直言って怖かったなぁ。

 野良犬一匹でもイヤなのに、三匹相手に果たして勝てるか・・と心配した。

 歩いてると後から来た車が止まり、何事か?と思って立ち止まると「お遍路さん。道が違いますよ。」と親切に教えてくれます。

逆打ち卯辰越え・「川筋」付近、四国遍路



 「あんがとさんです。でも逆打ちしとるんです。」と答えると了解してくれましたが、この道を逆打ちする遍路も珍しいんじゃろおなぁ、順打ちでも、遍路が通るのが珍しいコースなんだから・・

 山越えは、それほどキツクなく全て車道で舗装道てした。

 「折野」付近に来ると急に瀬戸内海が見え・・おぉぉ久々に見る海!!・・・・今度は海沿いにテクテク・・・・

鯖定食

 途中の店で昼食に鯖定食を注文すると、思った以上に、かなり鯖の切り身が小さかった。

逆打ち、四国遍路



 普通、鯖定食と言えば、少なくとも鯖の半身ぐらいは皿に載っていると思い、そおでないと鯖も恥ずかしいじゃろおに・・

 それが、あぁたぁ・・・半身どころか、半身をさらに半分切るならば、まだ言い訳になるだろおが、どお見ても無理して1/3位に切った鯖の姿しか皿に載ってなく、思わず越後屋と目を合わせちまった。

 そんな目で見られている、カワイソーな鯖の気も知らず、店のオバハンは同僚に「ちょいと、あんたぁ、この人達、遍路してなはるやて。来て・・来て・・・」と呼びます。

 そんな事を珍しがるより、このカワイソーな鯖をなんとかしてくれた方が、もっとウレシイ。

 あんまり珍しがるので聞いてみると「遍路は、めったに通らない」と、さらに盛んに珍しがってくれます。

 おぉぉ・・良かった・良かった・・人のやらん事をしねぇと面白くねぇからな・・と気分を良くしたので、鯖の小さかったのはガマンしといた。

海の公園

 しばらく行くと、「長浜」付近に「海の公園」の看板が有り、今はトンネルができたので旧道を公園にした所を通りました。

逆打ち・海の公園、四国遍路



 公園と言っても、海に流れついた流木のような物を道に引っ張り上げたまんまのような物とか・・

 道の真ん中に、デカイ石がゴロ~ンと置いてあったり、壊れたようなパイプみたい物が建っていたりして、きっと前衛芸術なのやろおねぇ・・・あんまり良さがよぉ~わからんかったが・・

讃岐相生駅より

 讃岐相生駅近くに来ると、一巡の時に通った懐かしい白鳥越えの山々が見え、山の途中から煙りが出ています。

 その付近を数機のヘリコプターが飛び回って、入れ替わり立ち替わり消化剤らしい物を撒いており、山火事があったのでしょう。

 この逆打ちでの卯辰越えでは大窪寺までの間、遍路とはだれ一人と出会わず、やっぱり皆は、切幡寺コースへ行っちゃうんだろおなぁ・・・距離が少し短いらしいから・・

大窪寺付近の民宿にて

 三巡逆打ちは雨の中を大窪寺へ着き、初めて民宿に泊まりました。

 なんせ一巡の時は越後屋を置き去りにして、捨てて行ってやろか・・と思った星越峠だったので、今度は無理せんようにと思って・・・

 民宿の夕食は、噂に聞いてた赤飯がタライにゴッテリ盛ってあり、「結願」祝いの赤飯と聞いてましたが、まさかこんな大きいタライに赤飯が入っており、お代わり自由だとは思わんかった。

 客は夫婦連れが二組と、男性客が二人テーブルで祝杯のビールを飲みながらボソボソ話しており、隣の夫婦連れが「霧の中を女体山越えをしたが、何も見えず残念だった」と話してるのが聞こえます。

 各自各様に、それぞれ永かった遍路道や、結願までの道中の想い出をボソボソ話しており、キレイどころを呼んで飲めや歌えのドンチャン騒ぎをするわけでもなく静かなもんです。

 知らない人が見たら、お通夜をやってるように見えたと思う。

 その中で、ワシらだけは、ビールで祝杯もせず会話もせず、さらに静かに黙ってモクモクと赤飯を食べてました。

 何で?・・言うても・・・せっかく他の人達は、結願した喜びを静かに噛み締め、その感激を話しとるのに・・・今から「逆打ち」予定の話しをしとったら、イヤミったらしいだろなぁ・・と思ったもんだから・・

 でも、まぁ・・そんな事にかまわず、他の人以上に赤飯をゴッテリお代わりして食べました。

 結願だろおが、これから逆打ちだろおが、どおせ店の人にわからんじゃろおし・・バレても文句は言わんじゃろおし・・・はい、赤飯うまかったです。

  大滝寺、四国遍路     西照神社、四国遍路


 二巡時に車で大滝寺へ行き、けっこうS字カーブの道でした。

 なお、大滝寺では山頂のため水不足によりトイレ使用は不可と言われ、また、それはもっともと思いますので、そのつもりで行った方が良いです。

「白鳥道大阪越え」

 讃岐相生駅付近より、大阪越え、四国遍路    大阪越え、四国遍路
 一巡の時に讃岐相生駅から白鳥道大阪越えをし、早朝出発して、すぐ近くから麓まで「四国の道」と一致しております。

 山道を上がる付近の民家から犬が吠える越えが聞こえます・・・いややなぁ・・大阪越え・地蔵、四国遍路

 なんか放し飼いみたいだし・・来なけりゃ、ええんだが・・と不安に思いましたが、幸い犬は来ませんでした。

 この付近に来るまで知らなかったんでが、この「白鳥道大阪越え」一帯も源平の戦いで、源義経が平家を追って来た有名な道だったらしく、この山道も義経主従が馬に乗って通ったんでしょう。

 馬も大変だったでしょうが、乗ってる武者も兜やら鎧が小枝に引っ掛かって難渋したやろおなぁ・・・先を急いどるのに・・・

 山を越して、麓の関所跡の看板を見て・・・もう跡形もなく、普通の民家が近くに建ってるだけでしたが・・・

 そこで「四国の道」方向と遍路シールの方向が別々の方向を差しています。大阪越え、四国遍路

 何となく「四国の道」方向が地図に記載されてるのと同じような気がしましたが、ここはシールを信じて国道の方へ出ました。

 線路を越え・・テクテク・・阿波大宮駅でしばし休憩・・・再び線路沿いにテクテク・・・・水仙が咲いてます。

 途中から道をそれて民家の道を歩いてると思ったら、急に3番「金泉寺」に出ました。

 そういえば、この寺にも弁慶の力石とかがあって源平縁の寺でした。

「結願」のウドンをすすりながら

 ここからは、1番霊山寺まですぐで、まずは腹ごしらえ・・・

 霊山寺・山門前にある店に入ってウドンを注文してると、僧衣の人がリュックを持って入って来て、やっぱし、ここで腹ごしらえしてからの出発なのでしょう。

 ウドンをすすりながら、よっぽど話掛けて、これからの遍路道の情報などを話してあげようかと何度も思いましたが、なぜかどおしても話掛ける事ができません。

 ウドンをすすりながらの、わずかの時間で語るにしては、あまりにも永々たる遠くて長い道筋と、多大なる出来事の数々・・・白鳥道大阪越え、四国遍路

 果たして、ウドンをすする間に、どれだけの事を伝える事ができるでしょう。

 僧衣の人が店を出た後は客はだれも居なく、そのまましばらくボォ~と休んでいると、店のオバチャンが「結願したんですか?」と話かけてきたので「はい」とうなづきます。

 お決まりの「遍路はどうだった?」というような、ありふれた事なんか聞いてきまへん。

 その後は、ただお互い黙って・・・はい、それだけで十分でした。

 やっぱり永年この商売しとる人には、見分けが付いて、その心境がわかるんでしょうなぁ・・黙っていて話掛けてこないのも思いやりの一つです。

 店を出て霊山寺山門前に立った時、今まさに若い一人の遍路が、大きい荷物を担いで出発しようと山門に向かって礼をしています。

 その不安気に去り行く遍路の後姿を、黙って見送ってると、過ぎし遍路道風景が再び次々と思い浮かび、あぁぁ・・あの遍路も、これからあの道を通って行くのか・・・

  「四国遍路記第一章」 完


  星越峠、歩き四国遍路←前頁「軒下」へ  四国遍路第一章は、これにて終了しました。 

 引き続き、四巡目を記載した「第二章」、内容は重複しますが「でぇかん&越後屋・遍路記」第三章をお楽しみください。


 恥ずかしながら「YouTube」に尺八曲「手向」を載せており、聞いて頂ければ泣いて喜びます。

 当「遍照の響き」ホームページに掲載されている写真がpixtaで販売されています。



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