HOME > 遍路・巡礼 > 四国遍路第一章「目次」 > 6 鐘の音
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弥谷寺から曼陀羅寺へは、今来た道を戻り途中から入った道の三叉路を真っ直ぐ行くと、途中の竹藪に古びた野仏が置いて在り、いかにも遍路道らしい雰囲気の道なので、よく撮影されています。
車道のガードレール下を潜って池を周ると、遠くに出釈迦寺の「奥の院」がある山が見えます。
途中、国道を横切る付近に「七佛寺」というのが有り、ただ・・その付近には・・何というか・・ナニする所のホテルが建っておりましてのおぅ・・・ワシは顔を赤らめて通りました。
曼陀羅寺には、以前は写真のように「笠松」というデッカイ笠のような形に作ってある松が生えていたのですが、三巡の時は松食い虫の被害にあって枯れて無くなり、今は存在しません。
「松が枯れたのは、寺の管理が悪かったからじゃあぁ~。」と非難する人も居ますが、この松食い虫の被害だけは予防処置等が、まだ完全に見つかっていないと聞いてます。
ワシも職場で、この松食い虫対策で頭を悩まされた一人ですので、皆の衆もお寺さんを責めないでください。
この「笠松」が元気だった写真は、後生に残る貴重なモンになるでしょうなぁ。
二巡の時、ここで色紙に笠松をボールペンでスケッチしていた人が、ワシの尺八参拝後に話し掛けて来ました。
「納経所へ行って描いた色紙に、納経印を押してもらおうと思ったが断られた。
そこを何とか・・と言って、ネバリにネバッてガンバり・・・、そのうちワシの尺八が聞こえて来たので、話題を尺八に持って行き、親しく話しが出来るようになったので、もお一度ネバッたが、どおしても「ダメ」と断られた。」と笑いながら話してくれました。
絵を見せてもらうと、笠松の横に「ちびまるちゃん」のマンガ絵が付け加えてあるので聞いてみると、いつも「まるちゃん」の絵を付け加えると言います。
曼陀羅寺から出釈迦寺へは、坂道をテクテク・・・。
途中から「奥の院」である「捨身ケ嶽」の屋根が、山の頂付近に見えます。
御大師様が、幼少の頃そこの山のテッペンから飛び降りて、仏の道へ入れるか試したらしいです。
危ない事しますなぁ・・・幸い天女が抱き留めて、ケガせんかったらしいですが・・・
二巡の時、その「捨身ケ嶽」へ行くため納経所へ道を尋ねると「寺に一人の男の人が居るから、着いた時に鐘を鳴らせば出て来る」と教えてくれました。
道は、えらい急坂の舗装された車道で、しかも一直線に上がるように道が付いており、「歩く」というより・・・まさに、杖にすがりながら・・敗残兵のように・・ヒーコラ言いながらヨタヨタと登ると言った方が当たっており、屋島寺への舗装道を上るのよりも、勾配がキツイと思う。
途中に水飲み場が有り、何でも効く霊水らしいです・・・たぶん。
しばらくヒーコラ言いながら車道を上ると、やっと昔ながらの遍路道が有り、やっぱり土の上を歩くという遍路道の方がええでんなぁ・・それらしい雰囲気の九十九折りの道で、石仏も所々にあります。
しかし、その遍路道も再び車道になり、今度は舗装されてないから少しは良いけど、いつか舗装化されちまうでしょう。
今は旧遍路道の一部しか残ってませんが一巡の時、この道は工事中と案内板が出ており、あの工事が始まる前に来ておけば、きっと良い遍路道だったと思う。
「奥の院」の寺に着くと、男の人が障子戸を洗って掃除しており、人が居たから別に鐘を鳴らさなくても良かったのだけど、来た記念に一つ「ゴォォアァ~ァン~~」と突きました。
鐘楼から見る景色は、下界が見下ろせて、ええでんなぁ・・・・
本堂に入って参拝しようとすると「本堂内での加持・祈祷等を禁じる」という主旨の貼紙がしてあります。
別にそのタグイの事をするわけでねぇんだけど、叱られる前に聞いておこう・・と思い「ここで尺八を吹いても、よぉ~ござんすか?」
「下の寺で了解を得てまっか?」
「まさか、このような制限が有るのを知らなかったので聞いて来まへんでした。」
と言うと、難しい顔して弱ったなぁ・・と判断に迷うような顔して腕組みします。
困らせるのも悪いと思い、「あっ、別にいいんです。どおしてもと言うわけではありまへんので。」
と、あっさり引き下がり、尺八を吹くのは止めて般若心経を唱えました。
私が尺八を吹くのを、あんまりにもアッサリ諦めてくれたので悪いと思ったのか、男の人は蜜柑をザルに入れて持って来てくれたり、お茶を出したりしてくれ、また窓からの風景を指差しながら親切に説明してくれ、遠い雲辺寺の灯りも、夜になると見えるそうです。
以前は麓の付近までしか車が入れず、徒歩でここまで登って来ようとした団体さんも、たまに居たらしいが、あまりの坂のキツサに途中で諦めて引き返した人が多かったらしい。
今は行事が有る時だけ、捨身ケ嶽入口まで専用の自動車が上がって来れるようになったそおです。
そやろおねぇ・・あの坂はキツかったもん、普通の車でも下手したら、ズルズルと下へズリ落ちちゃうやろおなぁ。
団体のバサマ達も、よっぽどコンジョ出さんと、ここまで歩いて上れなかったと思う。
聞けば、今までも尺八や三味線を弾きに来た人がいたが、本堂前で演奏したり、この山上に有る禅定場で演奏したらしく、そこでなら尺八を吹いても構わないとの事でした。
「捨身ケ嶽」は寺横の渡り廊下の下を通ると、すぐに岩場があり、そこに太い鉄の鎖がブラ下がっとるのが見えるんですわ。
その鎖を掴んで、ヨッコラショ・・とよじ登ったら終わりだと思ったら、も一つ鎖で登る所がありましてなぁ。
その鎖をよじ上った所が、御大師様が飛び降りた場所らしく、2畳位の広さの所に野仏があり、納札が数枚、風に震えながら跳ばないよう石で押さえて置いてあります。
後ろの山斜面以外は、パノラマ全景で吹きっさらし・・・下界とちがって風が強い所です。
しかし、よぉ・・まぁ・・こんな所からお大師さんも飛び降りる気になったもんだ。
寺に戻って男の人に礼を言い、遍路道を下りてる途中で「ゴオオォ~ォン~ォ~~ン・・」と、遠くで鐘が鳴り思わず振り返りました。
下寺への合図の鐘報か、ワシらへの見送りのための鐘か・・・
納経所へ登らせてもらった礼を言いに行くと、納経帳を書いてる最中で忙しいのに、わざわざ手を止めて手拭いをくれました。
納経所に参拝客が居なくなった時「上の寺で加持・祈祷は禁止と書いてあったが、そおいう事をする人は居るのか?」と尋ねると、
今も残る霊場であるため、その霊力の力を借りて加持・祈祷したり、自分の霊能力を高めようとする人が居るらしく、そおいう事をされると邪悪な霊が入り込んだりするため、せっかくの良い霊が逃げるらしい。
「実は本堂で尺八を吹いても良いかと上の寺で聞いたら、断られたので吹かなかった。
そおいう事ならば、やっぱし尺八吹いたらアカンのじゃったろおねぇ」
「あらあぁぁ・・それやったら構わんかったのに・・・」と残念そうに言ってくれたので、「今度行く時には、ここで断ってから、また登らせてもらいます」と言いました。
三巡目に来た時、団体が本堂で参拝してたので、先に大師堂を参拝し終わると、先ほどの団体が大師堂へ来て線香やら蝋燭立てるのにゴチャゴチャし始めました。
その慌ただしい中を一人のオバチャンが「尺八聞かせてもらった」と礼を言いに来て、500円玉を1個くれました・・・すんまへんねぇ・・・忙しいのに・・わざわざ・・。
本堂で尺八参拝をし終わって、納経所近くの休み処へ戻ると、納経所の中から大声でワメいている男の声が聞こえます。
はて? 何事じゃろ?・・と越後屋に聞くと、団体の記帳してた時に、納経所の人が個人の人達も沢山順番待ちしているので、個人の納経帳を団体の途中へ入れて記帳したらしく、それを団体の担当者が見咎めて怒り、個人の人に何か言ったらしい。
納経所から中年の女の人がハンカチで目頭を押さえながら出て来ました・・よっぽどキツイ事を団体担当者から言われたのでしょう。
納経所の人が盛んに「私が悪かったんです」と謝る声が聞こえてきますが、団体担当者は、なおもご立腹のようで怒鳴ってます。
団体参拝客の人達は納経所で、こおいう出来事や・・思い・・事実が有った事も知らないで家に帰り、楽しかった四国参拝の想い出を語りながら、その納経帳にどんな悲話があったのかも知らずに見るんだろなぁ・・・・
恥ずかしながら「YouTube」に尺八曲「手向」を載せており、聞いて頂ければ泣いて喜びます。
当「遍照の響き」ホームページに掲載されている写真がで販売されています。
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