HOME > 遍路・巡礼 > 四国遍路第二章「目次」 > 1 求道者の眼
H17.10.24 UP
数ヶ月ぶりの四国・・・5月の連休も終わった中旬頃、1番霊山寺は二巡時と同じように雨が降ってました。
あの時は、老遍路がバス停で野宿してましたが、今回は別の人が野宿してましす。
連休が終わった普通の日の早朝だったためか参拝客は少なく、初めて遍路に出発するという茶髪の若者が、本堂で不安そうにたたずみ雨の様子を見ています。
雨宿りも兼ね時間があったので、本堂近くに在る不動明王が鎮座する堂で尺八を吹いてると、本堂でお勤めが始まったのか太鼓の音が聞こえ始めました。
太鼓の重々しい単調なリズムの音を伴奏にして吹いてると、急に強いドシャブリになり雷まで鳴り始めます。
叩き付けるような雨音・・・・
フォルテ・フォルテシモに轟く雷鳴・・・・
負けじと低く重々しい太鼓のリズムは、音を刻み・・・
それに尺八が加わってメロディを奏でるという、それこそ不動明王の怒りを思わせるような凄まじくも鬼気迫る自然との合奏となりました。
しかし、こおいう状況で自然の音をバックに吹奏するのも、また情緒が有り、なかなか良いもんですなぁ。(^O^)
2番寺も人がほとんど居なく、閑散としております。
トイレ前には、昨年まで無かった立派な巡拝道具店が出来ていました。
その店先のベンチでモクを吸おうとすると、店のオバハンが「中に入って休め」と勧めてくれましたが、室内は禁煙かもしれんと思い、「モクを外で吸ってから入らせてもらいます」と言ったら、「かまわん」と言ってくれたので、中で休ませてもらいました。
強風と雨だったので助かったなぁ・・・
この店は、今年元旦に店開きしたそうで、何も買わないのに、お茶まで出してくれました。スンマヘン。
遍路笠にビニール覆いが付いてないのを見て、「笠の字が雨で流れないか」と聞いてきます。
以前に1番で買った笠にビニール覆いを付けずに雨の中を、ここまで来たら笠の墨が流れて白衣が黒く汚れた人が居たらしい。
私のは、幸いというか油性で書いてあるらしいので、そのような事は無かったのですが、墨汁で書いた物は水に流れ、ちゃんと墨を摺った物は水に流れないと他の人から聞いた事があります。
人間労力を惜しんだり、安物はアカンようでんなぁ・・・

3番金泉寺へ行くと、2番で見かけた頭に手拭いを被った若いアンチャンがいます。
アゴヒゲを伸ばし、若い衆にしては珍しく落ち着いた雰囲気なので「坊さんか?」と聞くと、
「皆から、そう言われるが坊主ではない。
5ヶ月かかって番外などを含めて一巡し、今はお礼参りとしてもう一度巡り始めた所だ」
と笑いながら言い「高越山」の状況を聞いてきます。
さぁ~・・その寺へは車でしか行かなかったけれど遠かったなぁ・・・・
「遍路用地図を一切持たずに歩き、出石寺は迷って2日かかって着き、下りの時もまた迷って2日かかって下りた。
数年前、外国へ行った時に地図を頼りに歩いてるのは日本人だけで、他の外国旅行者は地図を見ながら歩いてない。
それなら自分も地図を持たずに歩こうと思った」
というような事を話してくれ、若いのにええコンジョしてまんなぁ。
4番大日寺において、納札所横に在る新しい堂で尺八を一曲吹き終わり振り返ると、何時の間に来たのか、さっきの「若い坊さん風遍路」が入口の柱に背をもたれて座ってます・
外を見ながら聞いてたようなので、気付かないフリして黙ってもう一曲この遍路のために吹きました。
その日の夕方、終点である6番安楽寺で会った時、この遍路と初めてゆっくり話をしました。
私が尺八吹きながら遍路したきっかけや、それによる出会いや考えた事を話すと、この遍路も「実は、自分も遍路しながら絵を描いてる・・・顔料を使った花の絵だが・・」と白状しました。
そやろおなぁ、あの澄んだ目は何かを求道しとる人の眼だもんなぁ。
σ(*_*)と違って、欲深く血走る濁った眼をしてないもん。
それだからこそ、坊さんと間違えられるんやろおなぁ・・・
どうも、そこらに居るアンチャンと違って、タダモンでは無いと思っとったんじゃ・・。
σ(*_*)が初めて本堂で尺八を吹いた時は足が震えたが、そのうち慣れて来て震えが無くなった。
しかし、その後、初めて尺八を吹いて托鉢を経験した時には、最初と同じようにまた足が震えた・・・と話すと「忍辱(にんにく)ですねぇ・・」と言います。
うん?・・アンサン、仏教の専門用語を知ってまんなぁ・・聞いてみると、曼陀羅を描くのを手伝った事が有ると言います。
そやろおねぇ・・いくら手伝いと言っても、先程言ってた曼陀羅を描くのには仏教の知識も必要やろおしねぇ。
次の日は、各寺でこの「坊さん風遍路」が一足遅れて来たため、私の尺八を聞く事ができず「昨日は各寺毎に存分に聞かせてもらえたが、今日は聞けないなぁ」と残念がってくれます。
、σ(*_*)も、このアンチャンのために、よっぽど改めて吹こうかなぁ・・と思いましたが「未練」と思い、吹かずに別れ、切幡寺を最後に以後二度と会う事はありませんでした。
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恥ずかしながら「YouTube」に尺八独奏「惜別の唄」を載せており、聞いて頂ければ泣いて喜びます。
当「遍照の響き」ホームページに掲載されている写真が
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