HOME > 遍路・巡礼 > 四国遍路第二章「目次」 > 2 耳が痛い
H17.10.30 UP
朝早、十楽寺を参拝し終わると、ベンチに20才位の若い遍路が、サンヤ袋一つ抱えて寒そうにベンチに座っています。
「荷物は、無いの? それ一つ?」
「はい・・・(ボソッ・・と・・)」
「どこに泊まったの?」
「●●●・・(やっぱし、ボソッ・・・)」
「これからも、寝袋やテント無しで遍路するつもり?」
「はい・・(どおしても、ボソッ・・・)」
「まだ寒い時期なんだから、それだけでは寒いじゃろおがぁ。寝袋ぐらい買った方が良いでぇ。金無いの?」
「有るけどぉ・・・・(変わらずに、ボソッ・・・・)」
後で昨日の「坊さん風遍路」と会った時に、この事を話したら●●●で一緒に泊まったが、その日は寒い夜だったので、この「甘ちゃん遍路」の様子を見るに見かねて、自分の持っていた服と大きい布シーツを借してやったそおです。
四国へ来れば、遍路は親切にしてくれるから何とかなるという甘い考えで来ちまい、結局、こおして他人の助けを借りる事になるんだわなぁ。
いくら何でも遍路するのに、サンヤ袋一つだけで野宿・・ちゅうのは考えが甘すぎるじゃろおがぁ。
どこのどいつが、こんな甘い考えを広め、吹き込んじまったのか・・・マスゴミだろなぁ・・
後日、焼山寺を過ぎた徳島市付近で、他の遍路に「あの甘ちゃん遍路はどうなったか?」と聞いてみると、遍路内でも「あんな甘い考えで・・」と大評判だったらしい。
それでもさすがに「甘ちゃん遍路」は、寒さに耐えかねて途中で毛布を買ったそうだ。
途中で死んでなきゃええが・・
話をもどして・・・
これ以上「甘ちゃん遍路」と話を続けても反応が今一だったので、「甘ちゃん遍路」を置いて熊谷寺へ出発しようとすると、偶然、他の数グループ等が歩き始めました。
連られるように、そのグループの後ろを追うようにして「甘ちゃん遍路」も歩き始め、「先鋒」は若者3人グループ・・・
次いで「中堅」は、中年の10人オバチャン軍団・・・
「副将」を勤める、中年トッツアン3人グループが前を歩いてます。
しかし、歩いていても、どうもこの風景に記憶が出てこないんだよねぇ・・・・・
一度でも歩いた箇所は、つまらん場所でも何か記憶に残っており、あぁ・・あの時はこんな事があったとか、あんな事を思いながら歩いていた・・という場所が所々出て来るだけど・・・
道が違うんでねぇかなぁ・・と思って越後屋に確かめると
「これで、ええんじゃないの。
前の方に人も歩いてるし、もう2年も前の事だから、忘れっちまったんだろ」
と取り合ってくれず、サミシイ思いをしました。
「先鋒」「中堅」「副将」の3グループは、やがて追い付き・追い越されてグループ内が入り乱れ始めます。
どうなる事かと思ってたら、さすがに「先鋒」の若者グループは若いだけあって先頭を絶対にゆずらず、しばらくは「中堅オバチャン」と「副将トッツアン」グループが一団となり混戦模様となりました。
しかし、そのうち「中堅オバチャン」グループ内にも疲れが出て来たのか、完全に二つのグループに別れちまい、「副将」のトッツアングループに割り込まれます。
後ろからその追抜き・追越しの変化を見ていると、競馬を見てるようで面白かった。
このレースの講評をすると、後ろから来た「副将トッツアン」グループの一丸となった粘り強い追い込みが入り、先を行っていたグループ内に混乱を生じさせ、その振り切りの戦いぶりが見所だったと思われる。
車道に「熊谷寺」の看板を出ているのを見て、初めて旧道でなく車道を歩いてたのに気がつきました。
今までは旧道を歩いており、今回初めて車道を歩いたので、そりゃあ・・道に記憶に無いですわなぁ・・
「十楽寺」を出る時に先駆けして行った3グループが、何のためらいもなく車道を進んだのを見て、寺を出てすぐの所に遍路標識があったにもかかわらず、よく確認しなかったのが原因でした。
車道から旧道へ入り、立派な山門から入り直しました。
熊谷寺の前池は、どおした事か水が無くなってましたが、花菖蒲だけはきれいに咲いており、納経所付近の建物は工事してます。
いつも、この寺では御詠歌が流れとったんだけど、今回は工事のためか流れてません。
あれは、あれで良かったんだけどなぁ・・・
尺八を吹きながら遍路するキッカケになった懐かしの法輪寺・・。
境内のベンチに荷物を置いて休んでると、先程の「先鋒」グループの若者が参拝を終えて戻って来たので話しかけ、このベンチの有った所に数年前まで土産物店が有り、歩き遍路には芋やお茶の接待をしてくれてたという話をしました。
今日はどこに泊まるのか聞くと、「タダで◎◎に泊まれるから・・」と言い、その「タダ・・」と言う言葉にカチンと来たので聞きとがめて、言わなくてもいいんだろうけど・・
根がイジワルジジィなもんで、つい・・つい・・・
「あんた方には、耳の痛い事を言うかもしれんがなぁ。
最近、四国へ来ればタダで泊まれ、タダで飯も食えると思って来る人が多くなり、ジワッ~と問題になりかかっとるんやでぇ。
あぁた方が遍路するつもりで来たならば、タダで泊まって旅費を浮かそうとか、他人の世話になる事を前提とする考えなんかで遍路するな。
これから先、四国を巡ればわかると思うが、遍路道沿いの小さい店や宿がバタバタつぶれている。
四国にもお金を落とすという事を考えないと、必要な所に必要な店や宿が無くなり、次の世代では歩き遍路はできなくなるかもしれない。
四国の人は、ええ人ばっかりだが、私が以前に歩いていて「何が面白くて歩いてるんだ」と聞かれた事がある。
その時は「それがわからないので、歩いてます」と笑ってゴマかしたが、皆が皆、遍路をしている人に理解をもってるとは限らない。
そりゃあ、そうじゃわなぁ・・人が一生懸命に汗水流して働いてる側を、ヒマそうにホッツキ歩いてるのを見たら、そりゃあぁ~見ていてもあんまり面白くねえわなぁ。
遍路している時には、あんた方の行動を、どこかでだれかが、黙って見ている人が居るかもしれん・・という事を覚えていてくんなせぇ」と、優しく・・・早く言えばエラソーに説教しちまった。(^O^)
「先鋒」若衆グループが法輪寺山門を出る時に、近くに越後屋が居るのも知らず「耳が痛かったなぁ・・・」と、お互いに苦笑しながら言いながら出て行ったそうです。
当たり前じゃ。
σ(*_*)はイジワルな人間だからワザと言っやったんじゃから、余計なお世話かもしれんが、これからもバンバン言うたる。(^O^)
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