「越後33観音霊場」の打ち始めは、「名立」の1番「岩屋堂」なのですが、それより離れた「能生」に有る「白山神社」へ参拝するのが慣わしらしいです。
σ(*_*)も「白山神社」から出発しようかなぁ・・と思ったのですが、その付近には「親不知」という昔からの難所があり、どうせならば、その「親不知」の難所から出発しようと思いました。
もの好きですねぇ・・はいそのとおりです。
秋の気配が感じ始め、ほんとはキノコ採りが始まる季節で、キノコがどうなったか気が気ではないのですが、「越後33観音霊場」巡りを優先して仕事が終わった後、汽車で市振駅へ行きました。
市振駅には夜7時頃に着き、数人降りた客は迎えの車で家へ帰り、待合室にはσ(*_*)だけがポツンと残っています。
よっしゃあぁぁ・・この調子ならば、あんまり客の乗り降りは無いじゃろと思い、予定どおりこの待合室で野宿する事にしてベンチに荷物を置きました。
駅のすぐ横に交番が有り「警察官立寄所」の紙も貼ってあり、不審尋問を受けるかもしれんが、その時は、その時・・ダメならば、近くの「道の駅:いちぶり」のベンチででも寝る事にしよう。
まずは、その2番の野宿候補地「道の駅」へ行ってみると、コンビニとレストランというほどでないが食堂も有りました。
翌日用のペットボトルのお茶を買い、市振駅の待合室へ戻ると、先程は無かった大きい旅行カバンが2つ置いてあります。
ん?・・えらいハイカラなカバンだけれど、ここから乗車するんかな?
まさか、こんな外国旅行でもするようなカバンを持ってる人が野宿なんかしないわなぁ。
でも、ここら近所の人で、こんな立派な旅行カバンを持つ人が居るやろか?
と思いながらボオッ~と椅子に座ってるとヒマだったので、どうせ汽車の利用者数は無いようなので尺八を取り出して吹きました。
市振駅舎にはだれもいなく静かで、尺八の音が良く響き、家で吹いてる時よりも気分が乗ります。
家では、吹きたい時に吹けず、夜中に無性に尺八を吹きたくなった時もありますが、そこはそれ他人の迷惑になるので遠慮ちゅうもんがあります。
こおやって好きな時に、何の遠慮も無く、響きの良い場所で吹いてると、曲にのめり込み、吹きながら曲と対話しとるような気持ちになります。
「曲と対話」と言うと、何を言ってるんじゃこいつは・・と思われるかもしれまへんが、でも、その時は吹きながら対話してるように感じ、具体的には心のおもむくままに・・という事かな。
尺八を吹いてると戸が開く音がしたので見ると、σ(*_*)と同年代で同じような、むさ苦しいトッツアンが入って来たので、尺八を吹き続けたまま軽く会釈をし、曲が終わって改めて「こんばんわ」と挨拶して話しをしました。
カバンの持ち主は、このトッツアンで、えらい不似合いの物を持ってるなぁ・・と思いながら
「旅行ですか? はぁ・・、ここで寝られるんですか。σ(*_*)もここで寝ますので、よろしく。」と、先に仁義を切っときました。
「ええ音を出してますねぇ」と相手も仁義を切ってくれます。
お互いの、これからの行き先などを話し
「自分は始めて会った人でも、この人は良い人か悪い人か、すぐにわかるようになった。(話し方や態度で) あっ・・これ、どうぞ。」と言って缶コーヒーを1本くれます。
「自分は50才まで気が短く、数年前に離婚して娘が一人居りましてなぁ」
その娘さんと連絡は取っているのか?とは、立ち入るようなので聞かなかった。
「主に東北地方を旅しながら職を探してたが、これから飛弾高山へ行くんです。えっ?・・はい、知ってる人が居るのでアテは有るんです。」
何で市振駅に降りたのかと聞くと、「汽車から見ていて、野宿しやすそうな駅だったから」とアッサリ言いました。
聞けば今までも駅や「道の駅」に、けっこう泊まっているらしく、話してる途中で何度も「50才まで気が短かった・・」と失敗した反省の言葉を言います。
たいていの場合、失敗等すると他人や他のせいにして、自分は正しいと思いこみたいのですが、このトッツアンは他人等を悪く言う事なく、自分の心の中を正直に見つめて反省しており、エライッ!と思った。
今は四国の寺巡りをする「遍路」だけが有名になっちまったが、トッツアンは寺巡りはしていないけれど反省しながら放浪している「現代の遍路」と思い、これぞ「遍路」の原点のような気がする。
σ(*_*)は積極的に遍路納札を人に渡さない主義なんだけれど、これも一期一会の縁と思い、こんな出会いも有ったとヒマな時にでも思い出す記念になれば・・と渡すと、エライ恐縮して喜んでくれます。
「自分は、あんたの笠を見て、これは全国を歩いてる人だとわかった」
いや、それほど歩き巡ってるわけでもないんだけど・・でも、トッツアンの夢を壊したら悪いと思い黙っていた。
「あんたのような、お遍路さんと言うか、真っ白な装束を着たカワイソーな人がおったなぁ。
三重柏崎駅で寝た時に、その人が居てなぁ。 駅の待合室には戸が無く吹きっさらしで、2月の寒い時期じゃった。 寝袋を持ってないので毛布を貸してやった。」
うむぅ~・・どの辺がカワイソーなのか、よぉ~わからんが、たぶん寒い時に寝袋も無くに寝ていたからカワイソーだったのだと思う。
9時頃、話しも尽きたので寝る事にし、トッツアンは読んでいた新聞をパッパッと手慣れた様子でベンチに広げ、カバンの中から寝袋を取り出して寝る準備をし、カバンに何が入ってるかと思ったら、野宿用品が入ってたのね。
待合室は蛍光灯が点いており、眩しいので途中タオルを目の所に置くと少しは良くなった。
トッツアンは、翌日1番の汽車で出発するというので、「σ(*_*)が寝ていても、かまわず行ってください。」と言ったが、翌朝目が覚めるとトッツアンはまだ寝ていた。
σ(*_*)がゴソゴソし始めたら、トッツアンが目を覚まして「あらぁ・・乗り遅れた」と笑いながらゴソゴソと片付け始めました。
出発準備が出来たので、トッツアと最後の別れを言って、お互いに「元気で・・」を言い合い出発しました。
国道に出て市振駅を振り返ると、トッツアンは列車が来る構内へカバンを持って歩いてるところです。
同じ団塊世代の一人である放浪者との出会いと別れでした。
なお、今回の野宿道具一式をアップしております。
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