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 尺八を携え歩いた西国霊場 H17.10.1 UP


六波羅蜜寺での「無名の縁」/尺八を携えた西国33観音霊場記


 16番「清水寺」から狭い道を、西国33観音霊場の17番札所「六波羅密寺」行き、狭い道なのに、よぉ~けい車が通りまんなぁ。

 「六道の辻」で地図を見ながら、ここら付近で道を曲がるのだろおと思って歩いて行くと、ますます狭い道になり、普通の民家ばかりが建ち並んでいて、とても寺が有る雰囲気に思えません。六波羅蜜寺 境内

 側のチッコイ店で聞いて見ると、一本通り道を間違えており、教えられた道へ行くと、やっぱし普通の一般庶民の民家が建ち並んでるが、少し大きい道へ出た所に17番「六波羅蜜寺」が有りました。

 「六波羅蜜寺」境内は狭く、こんだけ民家が密集していると、境内が狭いのもしょうがないと思わせます。

 本堂に上れるようになっており、入ろうとした時、道路の方より「チリィ~ン」と、遍路が持っている懐かしい鈴の音が聞こえます。

 おぉぉ・・珍しい、ここで遍路姿の人が見られるのかと振り返って見ましたが、白装束とか巡礼姿は見つけられず、まぁ、いいや・・・気のせいかもと思い堂内へ入りました。

 堂内に入って、正面の賽銭箱に賽銭を入れる人は居るかもしれんが、西国33観音霊場を巡ってる納札を納札箱に入れるほど信心が有る人は滅多に居ないだろおと思い、隅っこの納札箱付近で尺八を吹く準備をし、そのまま立って尺八を吹きました。

 座って吹くと音が弱い気がしたもんで・・・・

 そしたら、あぁたぁ・・さっきの「チリィ~ン」は西国33観音霊場巡りの人達のよおで、σ(*_*)が尺八を吹いてる横を遠慮しながら、スマナサそうに納札を納札箱に入れに来ます。

 どうせ二~三人だろおと思ってたら、続々と人が来てゴッタ返し始めそうになったので、尺八を吹きながら後ろに下がり納札箱の場所を譲りました。

 すんまへんねぇ・・まさかそんな信心深い人が山ほど来るとは、思わなかったもんでして・・・・

 チラッと見ると30人位の人が正面に向かって座っており、σ(*_*)の尺八が終わるのを待ってるよおです。

 しかし、これがなかなか終わらないもんだから、少し時間をおいてから先達さんが本尊さんの説明を少しして、σ(*_*)の知らない経を唱え、最後に般若心経を唱えました。

 尺八参拝が終わって尺八の手入れをしていると、若い寺の坊さんがササササッ~~・・・と小走りに私の前に来て、丁寧に手をついて頭を下げてから何か言ってます。

 団体が唱える読経の方が大きい声なので、若い坊さんの話しが、よぉ~聞き取りにくかったが、尺八を誉めてくれたようです。

 今まで尺八参拝しても、わざわざ寺の人から丁寧に手をついてまでお礼を言ってくれた事は無かったもんだから、最初は何が始まったんかと思っちまった。

 丁寧に手をつかれたもんだから、こっちもアグラをかいて尺八の手入れしてたのを、慌てて正座しちまい、「いえ・・ども、ありがとさんで・・」と、お互いペコペコと頭を下げあいます。

 それで普通なら、ここで終わるんだけどもね・・・若い坊さんが

 「実は、今はこの寺の小僧ですが、この4月に故郷の寺へ帰ります。
 寺と言っても小さい寺で檀家も少なく信徒も少ないですが、寺をこれから大きくしたいと思っております。

 つきましてはその際には、ぜひ寺のイベントと言っても大きい事は出来ませんが、参加して頂き尺八を吹いてもらいたく・・・」


 「はっ?・・いえ・・σ(*_*)は、そのような大切な行事に参加できるような、立派な人物ではありまへん。」

 「ほんとうに普段着のまま参加して頂けるような、簡単な行事でして・・・ゴニョ・ゴニョ・ゴニョ・・・・

 「いえ、σ(*_*)はプロではなく、今吹いた曲も独学であり、そのスジの人からは「ニセモン・デッチアゲ」だと言われております。

 世間には、もっとそのような行事にふさわしい上手な人が沢山居ると思います。
 そのような方を探して、お呼びした方が・・・・シノゴノ・・・・。」


六波羅蜜寺 石仏 「いえ、今ここで聞かせてもらった貴方の尺八がいいんです・・・アアダ・コウダ・・・。」

 「σ(*_*)は、そんなつもりで尺八をやってるんでなく・・ドウノ・コウノ・・・」

 「もちろん日当、旅費は、こちらでお支払いいたしますから・・」
 「あっ・・いえ、日当・旅費なんかは、どおでもええんです。行くとしたら自分で行きますが・・」
 「あれでしたら、こちらから車でお迎えに行きます。」

 あちゃぁっっ・・この坊さんは、完全に何が何でも、どおしても来させるつもりらしく、普通だったら、これくらい断ればボチボチ諦めてくれるんだが・・

 「σ(*_*)は名も無き、無名なモンでして・・とても、そのような華やかな所へ出れるようなタグイの人物ではなく・・・ウンヌン・・・」

 「自分が知ってる仏師も無名ですが、今、寺へ納める毘沙門天を作ってもらっています。
 こおいう無名の人達の縁を広げて、寺を盛り立てたいと思っています。」


 ううむぅ・・「無名の人達の縁」か・・・ええ言葉やなぁ・・一番、痛い所を突いてきた。

 その言葉が気に入ったのと、今はこのように思ってくれてるかもしれんが、時間が経過すればヒョットしたらσ(*_*)との事を、コロッと忘れてくれたり、名刺をどっかへ無くしたりするかもしれんという事に期待を込めて

 「それでは御縁がありましたら、寺へ伺わせてもらいます」と言い、名刺を交換しました。

 よっぽど嬉しかったのか最後に握手を求められ、隣にボケェッ~と口空けて、成り行きを聞いていた越後屋にまで「奥さんですか」と言い握手を求めました。

 越後屋は、側で聞いていてσ(*_*)が絶対に断ると思ってたらしく、σ(*_*)もそのつもりでいました。

 しかし、まさかここで聞くと思わなかった「無名の縁」という天上界からと思われるような言葉に、固く貼り付いていた魔除札が剥がされ、つい・・フラフラと情けねぇ事に降参しちまった。六波羅蜜寺 本堂入口付近

 聞いてみると、「寺の再建する際に「六波羅蜜寺」の名前を使用すれば、資金などが集まるだろおけれど、師より5年間「六波羅蜜寺」の名前を使用せずにやれ」と言われたらしい。

 そおやろおねぇ、有名寺院の名前が協賛・後援等と出ているだけで「ハク」が付き、簡単に資金が集まるのはわかります。

 それをあえて「六波羅蜜寺」の名前を出させないと言う、この人の師も、エライッ!!、師はだれだか知らんが・・・

 作ってもらった毘沙門天は車で運ぶのではなく、京都からリヤカーに積み徒歩で寺まで運ぶのだと言ってました。

 後で貰った名刺を頼りに調べてみると、太平洋の海沿いに在る小さい町の、確かに大きくもなく有名でもない、地元の人だけによって維持されているような小さい寺のようです

 リヤカーで運ぶとなると、けっこうな日数がかかるでしょうなぁ・・・
 車の交通も多くて、邪魔扱いされるだろおし・・・
 天気の良い日ばかりでなく、雨風の時も有るだろおし・・・


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 恥ずかしながら「YouTube」に尺八独奏「惜別の唄」を載せており、聞いて頂ければ泣いて喜びます。

 当「遍照の響き」ホームページに掲載されている写真がpixtaで販売されています。


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