HOME > 遍路・巡礼 > 四国遍路第一章「目次」 2 発心の縁
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朝早く6番(安楽寺)を参拝した時、境内で60才過ぎの自転車遍路から声をかけられ、私の尺八吹奏を聴いていたらしく、自分も昔東京に居た時、尺八を吹いていたが歯を悪くして、以後吹いて無いと言います。
聞いてはいけないのはわかっていても、つい東京のどの辺に住んでいたのか聞きましたが、黙って笑い答えません。
しばらく話をして、いつかやってみたいなぁ・・と思っとる托鉢の事を聞きくと、托鉢は立ってやるより座った方が貰いが多く、自分達のやり方よりも尺八を吹いて托鉢する方が多く入るのではないか等・・・。
別れ際「今日はどこまで行く予定ですか?」の問いに「さあ・・いつまで終わらせなければならんという事が無いので、今日はどこまで行くと決めてない。」
もはや帰るべき家や故郷が無く、ずうっと四国を巡ってるのでしょう。
次の7番(十楽寺)で参拝していると、やや遅れて来た自転車遍路は、私の吹奏が終わるまで後姿をジイッ~と見ていたそうです。
返らぬ昔の、ありし日を想い出していたのか・・・・
この遍路とは8番(熊谷寺)のベンチで休んでるのを見たのを最後に、以後出会う事はありませんでした。
最初の車遍路の時、9番(法輪寺)境内の店で休みながら越後屋に「般若心経」の唱え方を教えてました。
私も、そんなに上手に唱えれるわけでもありませんでしたが、それでも区切るのならば、ここで・・と経本に鉛筆で印を付けながら話していると、
隣のベンチで休んでいたジサマが、ジワリ・・ジワリ・・・と近寄って来て、ついに話しかけて来て正式のお経の唱え方を教えてくれます。
聞けば元遍路で何回も巡ったと言い、つっかえながら今は経を詠むかもしれんが、遍路一巡するとスラスラと詠めるようになる。
さらに続けると、本堂・大師堂だけで唱えていたのが、歩いていて美しい自然の風景を見た時、あるいは寝てる時でも思わず唱えたくなるような時がある・・等々・・・。
聞いてると経の唱える呼吸のしかた等が、ほとんど尺八吹奏と同じやり方なので、思わず「尺八と同じ呼吸のやり方ですね。」と言うと「お主、尺八やるのか?」
それならば、般若心経を唱えるのもいいが、尺八を吹いて巡りなさい。
一巡すると必ず上達する・・なに?・・歌舞音曲のタグイだから寺に叱られないか?。
でえじょうぶ、四国遍路の寺では、どんな参拝の仕方をやっても良いのじゃ、仏教以外のやり方で参拝しても、だれも文句を言わん。
今までも、尺八や三味線を弾いて奉納して巡っとる人は、いくらでもおる・・歌を唄った人もおる・・心配すんな。
このように、尺八参拝のきっかけを作ってくれたのが、この法輪寺でした。
その時は車遍路区切り打ちの途中だったので尺八を持ってきてませんでしたが、正直やろうか、どうしょうか非常に迷いました。
なんちゅうても、人前でたった一人で吹奏する恥ずかしさが有り、これが、他の人との合奏だったら恥ずかしさも半減し、失敗してもゴマカシが効きます。
昔、地方の小さい演奏会で琴と合奏した時、曲の途中に尺八独奏の箇所が有り、幸い大きな失敗はしませんでしたが、初めての経験だったので、その緊張感は相当なものでした。
あん時は、できる事なら他のだれかにやってもらい、こっちは聞き役にまわりたっかったんだけどなぁ・・・けど、尺八は自分一人しか居なかったからなぁ。
独奏は、だれかを頼りにする事もできず、また助けてくれる人も居なく、失敗しても何かに責任を転化する事もできず、よっぽど自信がないと出来まへん。
寺で吹くとなると参拝客の中には、邦楽をやってる人も居るだろうし、どこのだれが、どのような時に黙って聞いとるかわからんし・・・油断もスキも見せれんしなぁ。
しかし、出来ることなら上達したい・・今までのように古曲や現代曲のMD・CDだけを相手に練習していては自己満足の域を出ない。
今もって信仰深い人間ではなく「御大師様の御利益にすがり・・」という考えは持っていませんが、それでも、やってみれば何かが変わるかもしれん。
吹奏しはじめたら周りの人が寄り集まって来て、こいつ何しとるんじゃ・・・とジロジロ見ねえだろおか・・曲を間違えたり、途中で音が出ずに止まっちまったら笑われるじゃねえだろおか・・
あのジサマは、ああ言っとるが吹き始めたとたんに、寺の人から「やかましい」と怒鳴られ叱られたら、どうすべえ・・・
等々・・いらん事を一杯考えながら、その区切り打ちが終わるまで、ああでもない、こおでもない・・・やるか、やらないかを真剣に考え迷い悩みました。
尺八遍路をするきっかけになった境内の店は、歩き二巡目に来た時は、もう有りませんでした。
恥ずかしながら「YouTube」に尺八曲「手向」を載せており、聞いて頂ければ泣いて喜びます。
当「遍照の響き」ホームページに掲載されている写真がで販売されています。
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