HOME > 遍路・巡礼 > 四国遍路第一章「目次」 > 25 月山神社
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四国の某ホテルに数年前から住み込みで働いてる元職業遍路がおり、従業員から「トッチャン」と呼ばれ親しまれている人と知り合いでした。
年は50代と聞いてましたが、70才位に老けて見えます。
「トッチャン」は親が建築土木関係の経営者で、「トッチャン」も腕が良かったのですが経理がドンブリ勘定だったので「トッツアン」の代で潰れたらしいです。
その後は家族と別れ、数年間ずうっ~と一人で職業遍路をしており、ある時、ホテルで人を募集していると聞いて雇われました。
仕事は、お客の送り迎えをしたり、元々建築関係の親方だったので、その技術を生かしホテルの雑用・運転手や自分の好きなように作業小屋などを建てたりして、遍路にピリオドを打ちました。
「トッチャン」は、遍路中に金が無くなり托鉢しようと思ったが門前に座る勇気が無く、海で海草を拾って食べたりしてましたが、ついに1週間ほどしてから托鉢を始めた事・・・などを話してくれました。
仏教の話になって、お互い少し意見が違っており、私としては軽く会話したつもりで、その後はケロッと忘れてしまってたのです。
しかし、翌朝「トッチャン」は私の顔を見るなり「昨日の話、あれはアンタの方が正しかった。ワシ一晩中考えて、自分の方が間違ってたのがわかった。」と言います。
あんらぁ~・・・律儀な人やなぁ・・・ワシは、そんなこと忘れっちまってグッスリ寝てたのに、「トッチャン」は寝ないで真剣に考えてたのね・・・悪い事しちまったなぁ・・・(^_^;)
今となっては、どんな内容の話だったのか、よぉ~思い出せまへんが、その時の状況は、よぉ~覚えております。
先日、電話が有り「トッチャンが数日前に死んだ」との連絡が有りました。
ホテルの与えられた自分の小さい狭い部屋で、だれに看取られる事もなく、朝、気が付くと亡くなっており、死因は「心筋梗塞」らしく、それほど苦しまなかったと思いたい。
どのような事情で家族と別れて遍路をする事になったかわかりまへんが、職業遍路した人の中では「トッチャン」の最後は、ホンマに良い人生を送ったと思います。
好きな酒飲んで・・・
自分の好きなような仕事をして・・
皆から親しまれ・・・
ある意味、逃げの人生だったかもしれまへんが・・正直、うらやましい人生です。
昔は遍路中に亡くなった人は、地元の人がその場で埋葬したと聞いており、心情として「トッチャン」は遍路中に、そこで亡くなったんだと思いたい。
実際は家族が遺骨を受け取り、故郷に帰ったよおです。
月山神社コースは、あんまり人が行かないコースです、何故なら一番遠回りのコースなもんで・・・(^_^;)
しかし景色は抜群にええ所で、いかにも太平洋!!という感じで・・・夏の暑い時に歩きました。
澄み渡る青空に、それに負けんくらいの紺碧な海に岬の岩肌・・・どこでも絵になるような感じです。
歩いて一休みした時、ふと見ると草むらの目立たない所に黒い小さい石に彫った地蔵さんが有り、一円玉が数個置いてあります。
古い物ではなく最近彫刻したようで、風雨にさらされてますが、それほど痛んおらず、自分の作品をソオッーと、人知れず置いて行った遍路を勝手に想像しました。
そして偶然それを見つけた遍路が、1円玉をそっと置いていく姿も・・・ええでんなぁ・・こんなのを見ると・・・
何かの美術展覧会とかに出品したり、他人の目を意識して作ったわけでなく、自分の思うまま作り・・・目立たんように、通りすがりのだれか気がつけば、それでいいや・・・という感じで・・・
この線彫地蔵さんは、ただ歩いてるだけでは、おそらく見つける事が出来ず、その場で休まなければ気がつかないと思い、これも仏縁でしょうなぁ。
「大浦」集落を通り抜け、山道に入る最後の家で犬が吠えますが、繋いであるから安心してくんなせぇ。
あんまり遍路が来ない所なのですが、それでもたまに遍路札がぶら下がっており、あぁ・・だれか通って行ったんだなぁと思い、付けて行った遍路を偲びます。
遍路道を登りきると車道に出て、その後は車道を歩きますが、ほとんど車は通りません。
月山神社まで人家が一件も無く、神社もそれほど大きくありまへん。
真念の書いた「遍路案内本」の絵を見ると、いかにも由緒正しき立派な神社と想像しとったのですが・・・御神体を象っていると思われる「三日月形の石」が道端に飾ってあります。
休憩所の背に、大きな絵馬が飾ってあるんだけど、ほとんど絵が見えなくなってます。
永年何人もの休む人が寄りかかったもんだから、だんだん絵が剥がれてきたんやろおなぁ・・・もったいない・・・・ワシも、ついつい寄りかかっちまったけど・・・・
宿毛近くの店で氷フラッペを食べてると、店のダンナが話し好きで、イノシシ狩りの様子を話してくれたり、自分で勉強した梵字で般若心経を書いたコピーをくれたりしました。
そのうち、店の常連さんが車で乗り付け「マムシ捕まえたから、持って来てやったでぇ」と言いながら、ペットポトルに押し込まれたマムシを見せます。
間近でマムシを見るのは始めてなので、そりゃあ喜んで記念写真を撮りましたがなぁ。
マムシを乾燥させて粉にして薬にするそうで、カワイソーに・・・このマムシもやがて粉になって、強精剤か健康薬品になって生まれ代わるのね。
「マムシを傷付けると、人には聞こえない助けの声を出して仲間のマムシを呼び寄せると聞いたが・・」
「自分もそれを聞いた事があり、マムシを見つけると徹底的にイジメて仲間の助けを呼ばせるのだが、まだマムシが助けに現れたのを見た事なく、現れたら取っ捕まえようと待っているんだ。」と言うんですわ。(^_^;)σ
おお~ぃ・・マムシィ~・・気ぃつけぇやぁ~・・・・下手に助けに行ったら、粉にされちまうでぇ。!(^^)!
猟をしているので、この辺の地理にも詳しく「今ノ山越え」のコースも知っており、車でそこを通った事がありますが、あんまり大した事ねぇなぁ・・・と思い、まだ歩いてまへん。
しかしダンナは、あのコースも昔からの遍路道で、猟の時に道の途中から少し下り所の滝で「行」をしてた人が居たと言います。
ふぅ~ん・・知らんかったなぁ・・道は車道だったから、新しく出来た道かと思ってたんだけど・・・
恥ずかしながら「YouTube」に尺八曲「手向」を載せており、聞いて頂ければ泣いて喜びます。
当「遍照の響き」ホームページに掲載されている写真がで販売されています。
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