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   砥鹿トンネル付近、四国遍路  H15/12/26 UP


十円玉の笑顔で布施の心を思う

養護院・杖大師

 松山市内を外れますと、左に静かな瀬戸内海を見ながら国道沿いを歩きますが、すぐに海が見えなくなり人家が建ち並ぶ所を歩きますが・・・

 国道沿いの「粟井坂大師堂」で休んでると、隣の公民館?へ地元のオバチャンが3人掃除しに来て、お菓子を接待してくれました。粟井坂大師、四国遍路

 それから、またひたすら・・テクテクテ・・・

 北条市の郊外付近に関係寺「養護院」別名「杖大師」と言うのがあり、二巡の時に立ち寄りました。

 普通のそこらの民家と変わらんような建物ですが、見慣れた赤い幟旗が立っているので、かろうじて寺だとわかります。

 小さい寺なので無人じゃねぇのかなぁ・・と思いながら本堂で尺八を吹き終わると、家の中からジサマが出て来て「尺八の音が聞こえたので、知人の外人が来たのかと思った」と言います。

 聞いてみると、岐阜に住んでいる外人で、自分で尺八も作っているらしく、そお言えば、そんな外人を以前テレビで紹介してたような気がします。

 尺八吹いて遍路してるという人が居るとは何度か聞いてますが、たいてい88箇所だけで、番外・関係寺まで巡り遍路してる人は、ほとんど聞きませんが、さすが外人さんは隅々まで巡ってると思いました。

 少し話しをして「手塚(絹代)さんに会ったか?」と聞くので「未だに御縁が無く、会ってない」養護院・杖大師、四国遍路

 「ぜひ寄れ。自分は手塚さんをよぉ~知っており、自分とは親しく行き来がある。先日も体の具合はどうだ?と電話した。」と言って寺からの道を教えてくれます。

 地図を出そうとすると「そんな物、当てにせんと歩け。」と言い、地図とは違った川沿いの道を教えてくれ、この住職も元遍路だそおで、やっぱし地図に頼るなと言いました。

 三巡時、この「養護院・杖大師」を再び訪れ、やっぱし無人のような雰囲気で参拝を終わり、前回のように住職が尺八の音を聞きつけて出て来るかな・・と思ってましたが留守のようです。

 境内のベンチで休んでると、家の中から奥さんが厚切りのカステラと茶を持って出て来られました。

 前回会った時の住職は、けっこうガラッパチ風の感じがする住職だったので、てっきり独身だと勝手に想像してたのですが、まさか奥さんが居るとは思わなかった。

 「住職さんは、おられますか?」「今、入院しています。」

 住職と違って静かさが漂い、立ち居・振る舞い・話し方等、品良く落ち着いた感じがする人なので、きっとお茶とか日舞をやってた人じゃないかなぁ。

 「養護院・杖大師」を出る時、奥さんに「昨年、この寺へ来た時に尺八を吹いてた者が来た。尺八吹いてる者は少ないので、言えばわかると思う。」と、来た事だけを伝えてもらうよう頼みました。

 ここの住職とは、もう一度話しをしてみたいなあ・・と思ってたんですが・・・後年、住職は亡くなったと風のウワサで知りました。

鎌大師

          
 鎌大師へは三度訪れ、手塚さんは家の中に居られたようですが、まだ会っておりません。

 「養護院・杖大師」住職の強い勧めも有りましたが、会える・会えないも「縁」だと思っているので、わざわざ家のピンポ~ンを押してまで、お会いするのもどうかと思い、会いませんでした。

十円

 三巡時に「浅海」付近を歩いてると、国道の反対側に居たバサマがσ(*_*)らを見つけて、急いで国道を横切ろうとします。

 接待でもするつもりなんかな?・・わざわざ車の通りが激しいのを無理して渡らんでもええのに・・・
 危ないなぁ・・・あっ・・車が急ブレーキ踏んだやねぇか・・「鎌大師」付近、四国遍路

 バサマが小走りに近寄って来て、越後屋に「10円くださらんかなぁ」と言います。

 思いもよらぬ言葉に越後屋が目が点になっちまい、何が起こったのかと「はあっ?・・」と聞き直すと同じ事を言います。

 きっとバサマは、どこかへ電話したいのだけど細かい小銭を持ってないんじゃろおぅなぁ・・と思い「10円で良いんですか?」と言いながら小銭入れを取り出して10円渡すと、σ(*_*)の小銭入れの中身を、しっかり見たバサマが

 「もう、10円くれると・・ええんじゃがなあ。」というので、もう10円渡すと、「やったあぁぁ~・・!(^^)!バンザァイ~」という感じで、もんのすごく嬉しそうな笑顔で「ありがとう」と礼を言って、トットと向こうへ行きました。「浅海」を望む、四国遍路

 さっそく電話を掛けに行ったんかな?・・と思いながら少し歩いた時、そお言えばどこかのホームページで、やっぱり「10円くれ」と言ってたバサマが居た事を書いてあったが、ここの場所だったかもしれない。

 遍路に接待するのは良く聞く話だけど、遍路にタカルというは聞いた事無く、どうせタカルなら、もおチット値を吊り上げて100円とかの金額を言えば良いのに・・そおすると断られっちまうのを知っるんかな?・・10円なら、そんなに拒否感も感じられんからのおぅ。

 でも、あれほど溢れんばかりの、もんのすごく嬉しそうな笑顔を見たのは、今まで50年余り生きて来たけど覚えがありません。

 タカられたという不愉快な気分は全然無く、むしろ、ホノボノとした気分になり、思い出しながら歩いてると、こっちまで笑顔になるのは浅海駅、四国遍路、なんでじゃろ?

 σ(*_*)らが接待を受けた時、あれほど心底ホンマに嬉しそうな顔するやろか?

 布施というもんは、渡す方が笑顔で差し出し、受け取る方も笑顔で嬉しく受け、渡した方がそれを見て、もっとそれ以上に嬉しくなって笑顔になるのがホントなのでしょう。

 バサマは、その「布施の心」というもんを教えてくれたんかもしれません。

 ちなみに托鉢してる時に、お布施を受けた時は「ありがとう」と礼を言ってはアカンらしいですが、尺八を吹いてた時に接待を貰った時は、どうしても「ありがとございます」と言ってしまう。

遍照院

 静かな瀬戸内海を見ながら、テクテク・・テクテク・・

 道端にデカイ鬼瓦が飾ってある付近へ来ますと「遍照院」と言うのがあり、歩いてる途中で「ぜひ寄んなせぇ」と地元の人が言ってました。砥鹿山トンネル付近、四国遍路

 「遍照院」へ入り本堂の近くで荷物を降ろすと、側にある土産物売りのバサマが、茶・菓子の接待をしてくれ、歩いて来る遍路には、いつもこのような接待しているようです・・すんまへんねぇ。

 バサマの話で、数週間前に若い女遍路が自分の背丈よりも大きいリュックを担いで、野宿しながら来たそおで、バサマが「遍路中に何が怖かったか?」と聞くと「犬よりも人間に会うのが怖かった」と言ったそおです。

 本堂で尺八を吹き終わって振り返ると、バサマが店の側で目を閉じ手を合わせながら聞いてくれてました。

 その時まで、σ(*_*)の尺八を聞きながら手を合わせて拝んでくれた人を見た事は無く、このバサマが始めてでした。
 「遍照院」付近、四国遍路 「遍照院」、四国遍路 「遍照院」境内、四国遍路


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 恥ずかしながら「YouTube」に尺八曲「手向」を載せており、聞いて頂ければ泣いて喜びます。

 当「遍照の響き」ホームページに掲載されている写真がpixtaで販売されています。



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