HOME > 遍路・巡礼 > 四国遍路第二章「目次」 > 3 ケビン
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切幡寺付近で昼頃になったので、上がり口に有るあんまり大きくない「うどん屋」に入りました。
店前に「お遍路さんの荷物置き場」と張り紙がしてあり、縁台には、すでにリュックや笠・杖等が4~5人分置いてあります。
狭そうな店なので、入れるじゃろおか・・・と心配して入ったら、3人の遍路が談笑しており、カウンターの席が空いてました。
店の人が「荷物を置いて先に寺へ参拝してきたら?」と勧めてくれましたが、σ(*_*)の参拝時間は長く、また寺ではいつもボケェッ~として、ゆっくりしているので「腹が減ってるので、食べてから行きます。」と言ったら、えらい珍しがられた。
普通の人は、先に寺へ行ってから食べるんかな?
談笑しとる人の話を黙って聞いてると、店の人が「先日、柳水庵のオバアさんが亡くなったのを知ってる?」と言います。
談笑しとる人達は「えぇっ・・?!」という感じで皆知らなく、ひとしきりあのオバアサンを偲ぶ話をしており、皆があのオバアサンに感謝していたのが良くわかります。
柳水庵でヤクルトの接待を受けた時、お礼に尺八を家の中へ向かって吹いたら、あのオバアサンは、障子の影で静かに聞いてくれてたなぁ・・・
(注:この時点ではオバアサンが亡くなったというウワサが流れてましたが、実際は生存されており病院に入院されていたそうです)
ウドンを食べた後、長い・・長い・・階段を上がって切幡寺の境内に着きました。
前回は祭りで人が沢山いたので、永いは無用とトットと帰ったのに、今はウソのような静けさで、参拝が終わってから、裏山の「奥の院」へ行ってみると、焼山寺方面の山々が遠望できます。
戻って境内のベンチで、ボオッ~・・と休んでると、小太りの外人男が上がって来ました。
「ワタシャ、ドコヘイケバ、ヨインジャ?」という顔してウロウロしとるので、越後屋が「日本語話せますか?」と話しかけると「スコシネ」と言って側のベンチに座って話をしました。
日本語は完全にペラペラではなかったですが、それでも意味が通じるので
「ユァ・カントゥリィ?
(オメエは、どこの産だ?)」
「メリカアァン(偉大なるアメリカ合衆国じゃあぁ、まいったか)」
「ユァ・カントゥリィ?(そおいう、オメエこそ、どこのイナカから出てきたんじゃ?)」
と、日本の地で日本人だとわかってるのに、わざわざ尋ねるのは、さすがアチラさんの国柄なのかジョークが上手いですなぁ。(^O^)
σ(*_*)こそ正真正銘の日本人じゃあという意味を込めて、マジメな顔して
「アイム・ジャパァン
(へい、日本というチッコイ島国で、細々と過ごしてるケチな野郎です)」
と言うと、お互いダハハ・・・と笑いあいました。
20年前に一度日本に来た事・・・
豆腐屋で少し働き、最初は面白かったが、すぐにイヤになって辞めた。朝が早いから・・・・
今は自転車で東京から伊豆・名古屋を経て、四国へ来たと話します。
σ(*_*)はあんまり納札の交換はしないのですが、日本へ来た時に見知らぬ遍路と話した記念になるかもしれん・・・と思い、納札を書いて渡してやりました。
どうじゃ、真ん中に仏さんみたいのが座り、珍しいワケわからん漢字が一杯書いてあって、いかにも東洋的でアリガタそうな神秘的のお札じゃろおう。(^O^)
相手も小さい名刺をくれ、慣れない横文字の名前を読んでみると「ケビン」と言うらしい。
「カメラOK? (アンサンの男前の顔を撮してもええでっか?)」
と言うので、これも国際親善の一つじゃ・・・日本が戦争に巻き込まれたら、必ず安保条約で助けてくれるのを固く信じて「OK」しました。
尺八を入れてる長い筒を見て、「ナニ?」と聞くので、うぅむ・・説明してもわかるかなぁ・・・と思い「シャクハチ・・・バンブー・フルート」と言うと、びっくりした顔して、「ワタシ、シッテマス。」
えっ!!・・ホンマに知ってるの?
そりゃあぁ、専門の一部の外人さんには知ってる人はいるかもしれんが、全世界的に有名な楽器でもないのになぁ。
聞いてみると、アメリカに居る日本の友達が尺八を吹いおり、名前を言って「シッテマスカ?」と聞きますが、有名な人かもしれまへんが残念ながら私は知らない名前でした。
その人はCDを出したらしく、自分はその時に、そのCD制作の仕事をした・・と言います。
尺八を指差して「モウ、オワッタ?」と、聞きたそうな顔してましたが、そろそろ次の藤井寺へ行く事にしてたので、せっかくだけど終わった旨を伝えて別れました。
階段の下に自転車が置いてあり、ハンドルの荷物の上に小さい「リス?」のマスコットが置いてあります。
「ケビン」とは、二度と会う事は無いと思ってましたが、数日後、小雨の中を井戸寺へ向かってテクテク歩いてると越後屋が、自転車で側を走り抜けようとしている人を見て「あれ?!・・あの人、切幡寺で会った外人さんでないの?」と言うので、見ればそんな気がしたので
「ヘェエイィ!!・・ケビン!!・・キリハタ・テンプル!!
(ケビンのダンナ!! 切幡寺で会ったケチな野郎ですがなぁ)」
と大声で言うと、向こうもわかったらしくチラッと見て手を振って行きました。
井戸寺へ着くと、ケビンが山門で待っており「シャクハチ・・フク?」と聞くので頷くと「チョットマッテテ・・バイスクール・・テープレコーダ・・モッテクル」
あっ、何も、そんな大げさな・・・・
録音されるほどのモンでもねぇのにぃ、それにテープレコーダまで積んで自転車で走り回っとるんか・・と思ってるうちに、もう自転車へ録音機を取りに行きました。
本堂では、経に合わせて鐘を叩いてくれるバサマが、尺八を持ってるσ(*_*)を見て「尺八を吹くんかね?」と珍しそうに尋ねます。
以前は、そこにはジサマが居たけどなぁ・・リストラされちまったんかな?
吹き始めるとカメラのフラッシュを炊いて撮影し始めたらしく、目をつむってますが、その瞬間、マブタが閃光のように明るくなります。
あっ、コラッ・・・こおいう所では、普通カメラは撮らないもんじゃぞ。
それに尺八を吹いてる姿を、正面から撮られたくねぇんだけどなぁ・・・後ろ姿くらいだったらガマンするが・・・・
日本人なら、チットは遠慮するんじゃろおけど、ガイジンさんだから、そおいう微妙な事がわかんねぇかもしれんなぁ・・・・・
途中で尺八を止めるわけにも、いかんし・・・
終わった時に、バサマはどこで鐘を叩いて良いのかわからんかったよおで、遠慮がちに小さくゴォ~ン・・と鳴らしてくれました。
σ(*_*)もどこで鐘が叩けばええのか、わからんが・・・
それでも、ええんじゃないかなぁ・・気は心じゃ・・。(^O^)
ケビンと山門で別れ小雨の中を歩いてると、後からケビンが追い抜きながら「サイナラー」と言い、大きく手を振って行きました。
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