HOME > 遍路・巡礼 > 四国遍路第二章「目次」 >1 ルリー
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甲浦の白浜海岸駐車場で出発用意をしてると、女の外人遍路が歩いて行きました。
道中追い越しながら「ハロー」と声を掛けて行き、サーフィンで有名な「生見」の自販機で飲み物買ってると外人遍路も買いに来ます。
「キャンユー・スペーキング・ジャパニーズ?
(へっへっへっ・・ネーチャン、日本語わかりまっか?)」
「ワカリマセン・・」
あらあぁ・・アッサリと日本語で・・・しかしホンマに日本語がわからんらしい。
そんな日本語もわからん人が、ここから先、野根を過ぎたら佐喜浜までの長距離、人家も店も無いオトロシイ所なんだけど、このガイジンさん、わかっとるんかなぁ。
余計なお世話かもしれんが、その事を教えてやろおと思い、東洋大師への分かれ道で彼女を待ち、手招きして一緒に東洋大師へ行きました。
地図を見せながら、
「ディスポイント・・ディスポイント・・・・
(ねーちゃん、あのなぁ~・・ここが今居る所の東洋大師ちゅう場所ですねん。)
アバウト・ファイブティィンキロメーラ・・ノーマーケット、ノードリンク、ノーフード・・
(ここからだいたい15kmほど、店も無く、飲み物とか食べ物も有りまへんでぇ。)
ハブァユー・フードゥ・エンドゥリンク?
(ねーちゃん、食い物とか飲み物持ってるか?)」
「ナントカ・カントカ・・ペラペラ・・」
すまん・・あんまりにもホンマモンのネチイブ英語でペラペラやられちまったもんで、よぉ~わからん。 しょうがねぇ、困ってたら分けてやろ・・・
名前は「ルリー」で、四国を巡ったら、オーストラリアに行くというのは、話していてわかりました。
先にルリーが出発ましたが、伏越岬の休息所で休もうとしたら、ルリーが休んでました。
これも何かの縁じゃと思い、記念にσ(*_*)の小汚い笠と杖を持たせてデジカメを構えると、笑いながら「オォォ・・」と言いながらカメラの前に立ってくれます。
休息所でメールアドレスの交換をし、後日メールで送ってやりました。
ルリーのリュックを試しに担いでみると、これがまたけっこう重く、こんな重たいのを担いでよぉ~歩きますなぁ。
ガイジン女でさえ、こんな重いのを担いでるんだから、そりゃあぁ~・・日本が戦争に負けたのも、仕方がないかもしれん。
先にルリーが出発しましたが、やがて追い付き、追い越し・・・そやろねぇ、あんだけ重いの担いでるんだから、ユックリしか歩けないわなぁ。
以前に歩いたゴロゴロ海岸・・あの時は、わざわざ海岸の波打ち際を歩いてドエレエ目にあっちまい、もう二度とあんなアホな事はせんとこ。
昼頃「法海上人堂」に到着したので、後から来るルリーにも声を掛けると堂まで上がって来ました。
「ランチ(昼飯にしないかね)」
心配していたルリーの昼飯は、小さいドーナツが入ってる袋菓子だけのようです。
カワイソーなのでσ(*_*)らの食料を少し分けてやり、5本で300円だかの魚肉ソーセージを一本分けてやりました。
ソーセージの皮の向き方がわからない様子なので、歯でシッポの方をガリガリと噛み切るマネをしてやったら、ちゃんと噛み切りフィルムの皮をむいて食べていた。
だいたいソーセージちゅうもんは、アァタの国が本場じゃねぇか。それともアチラの国では、こおいうモンを食わないんかな?
ルリーも、貰ってばかりじゃ悪いと思ったのか、袋菓子のドーナツを勧めてくれたので、少し食べましたが、こんなのばっかり食っていて、よぉ~あれだけの重いリュックを担げるなぁ。
ガイジンさんの年はわからんので
「ハァゥオゥルド・アユー?(ネーチャン、年なんぼや?)」
「サーリィ・・(30才)」
休みながら、昔この法海上人堂は壊れていたが、一人の遍路が、ここを通る遍路に再建を呼びかけ、それに賛同した数多くの無名遍路達だけの労力・助力の手により再建された逸話を話したかったのだが、なんせ語学力が無いもんだから説明できんかった。
また別々に歩き木陰で休でると、後ろからルリーも一緒に並んで休みます。
「ナントカ・カントカ・・ペラペラ・・・バスルーム?」
はっ?何だって?風呂入りたいんか?今日は暑かったからのおぅ・・と思ったが、そお言えばアチラの国ではトイレの事をバスルームと言ってたなぁ・・そか、ネーチャン、トイレへ行きたいんか・・
この先の「佛海庵」にトイレが有るのを知ってたので、地図を見せながら
「アバゥトゥ・・トゥキロ・・テンミニッツゥ・・
(そうやのおぅ、ここから約2kmの所で歩いて10分ほどガマンしなはれ。
だいじょうぶか?まだガマン出来て持ちそうか?
漏れそうなら遠慮せんと、そこらの海岸か草むらでやりなせぇ)」
「佛海庵」に到着し、ルリーにトイレの場所を教えました。
付近で作業していたトッツアンが、それを知らずにトイレへ行こうとしたので「女のガイジンさんがトイレに入ってるので、すんまへんが、チット待っててくんなせぇ」と言うと「あっ、そうか」と言って使用せずに行きました。
佐喜浜の古い町並みを歩いてると、小さなスーパーに「かき氷のアイス」を売っていたのでルリーの分も買って、店近くの日陰でしばし休憩。
「かき氷」を頭や首に当てて冷やしてると、やっとルリーが来るのが見えたので
「カムヒィア・アイス、アイス
(ネーチャン、冷たいアイス有るでぇ。早よぉ~来い。)」
と言って手招きすると小走りで駆けて来て、アイスを渡すと「オォォ・・」と嬉しそうに氷を首に当てます。
「ハゥマッチ?・・・(いくらでっか?)」と言って財布を出そうとするので
「ノーノー・・ギフト・プレゼント・・プリーズゥ
(ええんじゃ、気にすんな。家が傾くほどの大金でもねぇんだから。
どうしてもくれると言うなら100万ほどくれれば、嬉しいんじゃけど・・)」
そのやり取りを見ていたスーパーのオババが、接待だと言って「オハギ」のパックをくれました。
「ザッツ、グランドマザー・ギフト・・
(あのオババが、カワイソーな遍路に接待してくれはったでぇ)」
しかし、日本語もよぉ~わからんガイジンさんだから「オハギ」なんて食べ物は、見た事もなく知らねぇんじゃないかなぁ。
茶色のブツブツしとる物やら、黄色の粉が付いてゴロ~ンとしてる物なので、得体の知れんモンじゃと思って食べないかもしれんと思い、食べられる事を証明するために一個食べました。
昼飯に袋菓子のような物を食べてビンボー旅行してるルリーに、晩飯代わりにでもなるだろおと思い、残り全部をルリーに渡しました。
「ペラペラ・・ホテル・・?・・」
あん?この辺に宿が無いのか聞いてるのかな?佐喜浜には民宿は無かったような気がするが・・
スーパーのオババに聞いて確かめると、「此処にはないが、先に行けば有る。」と、やっぱり「尾崎」か「徳増」しかありまへん。
再び地図を見せながら、
「ディスポイン・・・ディスポイント、ホテル・トクマス・・
(ええか、よぉ~見なせぇ、今ここに居るんじゃ。そいで、ここまで行くと「徳増」という民宿がある)」
佐喜浜を歩き始めてしばらくすると、後ろから若い男の遍路が追い付き、ルリーと楽しそうに話しながら歩いています。
あのアンチャン英語が話せるようやな。
まぁ、いいや・・それなら、ルリーの宿もアンチャンに聞いて何とかしてもらった方が良いだろと思ってたら、アンチャンは「尾崎」に泊まるらしく、そこで別れてしまいました。
「徳増」の前に来たので、後ろを付いて来たルリーに
「ディスホティル・トクマス・・・グッバイ、シユーアゲェィン。
(ネーチャン、ここが「徳増」ちゅう民宿じゃ、一流ホテルではないが・・ここで別れるが、道中悪い男にダマされて、どこかへ売り飛ばされんようにな。
まぁ、その年なら、そんな心配せんでもええかもしれねぇが・・そいじゃ、サイナラ。)
と、民宿を指差すと、すがりつくように潤んだような瞳で
「プリーズ・・ペラペラ・・ペラペラペラペラペラペラペラペラ・・・・」
はっ?何?・・愛の告白か?・・・弱っちまったなぁ・・最初に言っておくが、σ(*_*)に惚れるとヤケドするぞ。
「ペラペラ・・ノーデイナー、ノーモーニング・・デスカウント・・ペラペラ・・」
あん?・・違うみたい、どうやらσ(*_*)に素泊まりの値段を聞いてくれちゅうとるらしいのおぅ。
チェッ・・愛の告白じゃなかったんか・・しっかりしとるのおぅ・・
まぁ、わずか1日という短いながらも、袖擦りあいながら一緒に旅した仲間だもん、ここは一肌脱いでやるか。
しっかしぃ、σ(*_*)でさえも、あんまり宿に泊まった事ないのに、宿の交渉するとはなぁ・・
民宿の玄関戸をガラガラ・・っと開けて、σ(*_*)だけ中に入り声を掛けるとオバハンが出てきました。
「あのおぅ・・部屋、空いてますかいのぉう。
いえ、σ(*_*)が泊まるんじゃなくて、女のガイジンさんが泊まりたいというのですが、日本語は全然ダメなんです。」
「ええですよ」と言ってくれたので、さらに追い打ちをかけて、
「そいで、本人は夕食無し、朝食無しの素泊まりを希望しているんですが、いくらでしょうか?」
「3500円」と言うので、外で待っていたルリーに
「ルリー・・カムヒィア
(ネーチャン、遠慮せんとグッ~ッと中に入って来なせぇ、σ(*_*)の家ではないが・・)と玄関の中へ呼び込み
「ノーディナ・ノーモーニング・・(えっとぉ・・千の単位を英語で何と言ったかなぁ、忘れっちまった、しょがねぇ)・・スリィー・ファイブ・ゼロ・ゼロ・エン・・・オッケィ?
(ネーチャンの心配しとる夕食無し・朝飯無しの値段で3500円じゃが、それで良いか?
腹が減ったら、さっきもらったオハギを食べて餓えをしのげ。
水くらいは飲ませてくれるじゃろから、これからも無事に生き永らえるんじゃぞ。)」
わかったらしく、頷きながら「オケェ・・サンキュ・・」と言い、玄関の上がり縁に荷物を置いたのでルリーと別れました。
「ペラペラ・・デイスカウント・ディスカゥンツ・・・ペラペラペラ・・・
(ゴラアァァ~~ッ、もっと値切り倒して、何とかならんのか、しっかり交渉せぃ、このコンジョナシ!!)」
と、まくし立てられたら、どうしょうかと思ったでぇ。
もっと英語を勉強しておけば良かったと思う・・このごろ・・
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