HOME > 遍路・巡礼 > 四国遍路第三章「目次」 > 歩き遍路二巡・5 虚無僧
H20.7.21 UP
1番霊山寺へ早朝、車で乗り付け、小雨の中を歩き二巡目に出発せんとす。
寺の駐車場の待合室ベンチに、一人の歩き遍路が野宿していたとみえ荷物を整理していた。
挨拶しようか・・と思いしが、雨も降っており、トットトやる事はやって、サッサと次の寺へ行こうと思ふ焦りの心が充満す。
しかし目ざとい越後屋が「でぇかん、あのお遍路さん・・・・雲辺寺で会った人じゃない?」
うん?・・まさか・・・先月、室戸のゴロゴロ海岸で出会ったのに、いかに逆打ちといえ、まだ、こんな所に居るはずがねぇ。
もう、とっくに巡拝は終わって、家へ帰っとるころじゃ・・・なにを寝ぼけた事を・・・越後屋もトシじゃのぉ・・と思いしが・・・
向こうの遍路も、越後屋の声に気づいたのか、こっちを見て会釈をしている。
近眼なもんで、顔がよ~わからんけども、とにかく近寄ってみると、あんれまぁ~(@_@)・・・越後屋の言う通り、あの老遍路さんでねぇべぇか・・・
聞けば、やはりこの待合所で野宿し、この一巡を生涯の最後とし、気にいった箇所では何日も滞在していたので今日までかかり、これより談議所へ寄って種蒔大師へ行くと言ふ。
お互い、これから、まさに出発しようとしている所なので、長話もできず、その後の事や近況等を短く語りて別れる。
二番寺の本堂にて、いつものとおり蝋燭に火を付けようとしたら、越後屋が、また近寄って来て訴える。
なんじゃ・・雨が降って濡れるから、早よ終わらせたいのに・・、
まったく、この忙しい時に・・・と思いつつ・・訴えを聞いてやる。
「でえかん・・あの人、尺八持っている」
ん?・・おおぉぉぉ!!・・・見れば、雨の当たらない所にリュックを置き、まさに尺八を入れようとしとるでねぇか。
今まで巡りて遍路が寺で尺八を吹きし人有りといふ話し、数回聞きしれども、未だ目の前で、そおいう人物に会った事無し。
蝋燭に火を付けるのも忘れ、100円ライターを片手に持ったまま近づき話しかける。
「ヘッヘッヘッ・・・(^^;
そりがし、趣味で下手クソな尺八吹いとる、ナントカ流を習ったケチな野郎でござんす。
以後、お見知り置きのほどを・・・お見を受けした所、尺八を吹いておられるようで・・・」
と、まずは丁寧に仁義をきり、いつも自分でも、どうにかならんかと思ってる汚い字で納札に竹号を記して渡す。
相手は、気さくに名刺をくれ、見ると・・・・、ゲゲェェェッッッッ!!・・ホンモノの虚無僧でねぇか。
しかも肩書きも、かなりエライ・・・・・(*_*)σ。
こ・・こ・・これは・・・失礼があってはなんねぇ・・・
オラみたい、どこの馬の骨か、わからんモンを相手にしてくれんかもしれん・・・と思いしが、気さくに話し相手になってくれる。
ホントは専門的な話しをしたり、どんな曲を吹くか聴きたかったんだけど、雨が降って濡れるし、相手も歩き遍路で先を急いでいるようなので軽く話しをして別れる。
次の寺へ行ったら、丁度吹いてる所だったが、すぐに終わってしまった。
しかし番外の愛染院にては曲を聴く事ができ、さすがプロの人はウマイでんなぁ・・・(^_^;)
最初に「ホロホロロロロ・・・ホロホロロロ・・・」と、鳥が羽ばたくような綺麗な音をさせて短い曲が始まり、終わった後で聞いてみると「調子」という曲とのこと。
曲が始まる前の「ホロホロ」は、そこらで飛び回って遊んでる神仏の霊を呼び集めるためのものだ伝ふ。
こおいう事は、初めて聞いたので、その「ホロホロ」の指使いの教えを乞ひ習ふ。
しかし、トシのためか、その時に聞いてわかったが時間が過ぎると、物忘れが激しくなり、どおやったかなぁ・・・と、だんだん不安になり、こりで正しかったかのぉ・・・と疑いの心が出てくる。
幸い次の日、焼山寺から次ぎの寺へ行く途中に休んでいると、再び会ったので歩きながら杖を尺八に見立てて、指使いを習ひ教わる。
この虚無僧遍路さんは、ワシも名前だけ知ってる尺八界の有名な人達とも、かなり親交があるようで・・・・そりゃあ、そおですわなぁ・・プロの人だもん。
ワシみたい、ドシロウトに毛が生えとるようなモンとは違うんだから、雲上の存在でしたが、エラブル事もなく親切に教えてくれました。
また、かなり足が速く、いつまでもワシの相手をしてもらうのも気が引けるので、先に行ってもらふ。
早朝、急ぐ心が有ったのに、老遍路と出会い出発が遅れ、その日は雨が降っていたのも、この虚無僧と出会うために天が配慮さりた縁だったのかもしれない。
01/03/23記載
今、改めてこの時に出会った虚無僧さんの服装を見ると、ズタ袋はネズミ色というか小豆色に灰色がかっている色で袋も大きく、輪袈裟もズタ袋と同色のような感じがします。
普通の遍路だったら、寺近辺で売ってる白いズタ袋で原色に近い輪袈裟を買い求めて、それで適当に間に合わせるんですが、こおいう持ち物を見ると、予め準備して来た寺関係の人だったのでは?と思う。
服装は白装束なのですが、この日は雨が降っていたので、黄色の雨除けズボンを上から履いてました。
なお、写真は本人の了解をとってないので、わざと小さくボカしてあり、また「第一章」「徳島 1 虚無僧との出会い」に記載してます。
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