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原子力船「むつ」・原子炉、尺八を携え巡った田名部海辺33観音霊場記 
    2011.7.29 巡礼(車)    2012.6.18 掲載

原子力船「むつ」漂流と危機管理/田名部海辺33観音霊場

むつ科学技術館

 「むつ科学技術館」へ向かって車を走らせてると、地図では海岸近くを通ってるのに県道266号線からは海が全く見えまへん。県道266号線、自転車で巡った田名部海辺33観音(下北半島)霊場記

 それにしても一直線の真っ直ぐな道ですねぇ・・一部狭い箇所が有ったが、たぶん地主がゴネたんでしょう。

 「むつ科学技術館」は原子力船「むつ」を利用した科学館らしく、そお言えば「むつ」が廃船になってからどおしたのじゃろと思ってたが、ここで安眠してたのね。

 と思ってたが、この原稿を書くために調べたら、船体を切断分離して、原子炉付近を取り外して再び接続し、海洋地球研究船「みらい」に生まれ変わったそうな。

 で、ここに展示されている原子力船「むつ」の現物は、大まかに言って原子炉・ブリッジ・制御室でした。

 原子力船「むつ」もカワイソーな船だったと思う。むつ科学技術館、田名部海辺33観音

 わずかな放射線漏れで大騒ぎされ、太平洋を漂流し港で補給を受けようとしても、そのスジの団体が反対し、やむを得ず洋上補給したという記憶が有ります。

 原子力関係の展示が多いのかと思ってましたが、そおでもなく原子力に関係の無い普通の一般科学的な事を、実際に動かして確認できる実験装置が施設の半分ほど占めてました。

 その中でも「竜巻」の出来る仕掛けなんて、見ていても飽きずに「おぉぉぉ・・・!!」と思いながらボオッ~と見てました。竜巻の出現。むつ科学技術館、田名部海辺33観音

 雲の輪を作る装置では、押さえる場所が違っていたらしく、また軽く押さえていたため、出来ないなぁ・・と思ってたら、係のネーチャンが寄って来て「ここを少し強めに押すと出ます」と親切に教えてくれ、やってみると見事に輪ができ「おぉぉぉ~・・・!(^^)!」

 時間が有ったら、ゆっくりと一つ一つ実験してみたかったが、夕方4時頃に入ったので、ゆっくり出来なかった。(4時半閉館)

 「むつ科学技術館」は、けっして子供ダマシの科学実験ではなく、大人も十分に楽しみながら1日ゆっくり実験できる珍しく良い施設だと思う。

 下北半島に行く機会が有れば、是非寄ってみてください、隠れた穴場だと思います。むつ科学技術館内、田名部海辺33観音

 もっとも民主党の「パフオーマンス事業仕分け」作業で廃館候補に上がったらしいが、この先どおなる事やら。

 まぁ、民主党のイデオロギーからは目の敵として、廃止させたい施設の一つでしょうなぁ。

 この「むつ化学技術館」を廃止する位ならば、皆から嫌われている天下りシロアリ協会のNHKを仕分けすれば良いのにぃ。

 「むつ」の操舵室も再現されており、制御室のスイッチも自由に触っても良かった。

 もっとも触っても、何も変化しなかったが、どれかを動かすとランプが点灯するらしく、それでもこおいう物は、いじくり回してみたいもんです。「むつ」操舵室、むつ科学技術館、田名部海辺33観音

 制御室は今では普通の風景のように、当たり前の配電盤群やテレビモニュターが有ります。

 しかし、この船が出来た昭和40数年頃においては、当時の科学技術の粋を集めた近代的最新設備だったと思う。

 なんせ、その頃はやっとカラーテレビが一家に一台程度の時代だったと思うが・・。

 原子炉室が再現されており、思ったよりも小さく、窓が2つ有って内部を見る事ができました。

原子力船「むつ」漂流

 ここからは、「むつ」漂流に関してσ(*_*)が思う事と、くだらん私的の想い出なので、興味の無い方は読み飛ばしてください。

 白状しますとホームページの原稿を書く時は、それに関する事を一応ネットや本等を読んで確認しております、何でかと言うと、後で間違ってたら恥ずかしいもん・・・(^_-)ヘッヘヘッ・・・「むつ」制御室、むつ科学技術館、田名部海辺33観音

 「むつ」漂流に関して図書館で本を探すと、「原子力船「むつ」の軌跡(下川速水:著)」というのがありました。

 著者は、むつ市助役・日本原子力開発事業団むつ事業所に勤務され、「むつ」の母港決定時から出航・漂流付近まで、その苦情承り等の窓口的役割に立っていたようです。

 本の内容は決してイデオロギー的に偏っておらず、中立・時系列的に反対運動やその推移状況等が記載されており、臨場感が溢れる、その場に実際に居ないとわからない事実が記載されていました。むつ制御室2、むつ科学技術館、田名部海辺33観音

 「むつ」漂流に関しては、40年くらい前の事なので「太平洋上で放射能漏れを起こして漂流した」程度しか覚えていなく、本を読んでやっと全体の流れと状況がわかりました。

 以下、本を読んでの感想

 むつ市長は「遮蔽に放射線漏れの可能性がある」と指摘し、アメリカ社との技術契約で軍事機密が有ったため、全てのノウハウを教えてくれないだろうと危惧しており、「むつ」の強行出港前夜に訪れた、むつ事業所長に「今度の出力試験で必ず事故が起こる。首をかけてもいい。」と断言したらしい。(154頁)

 ここを読んで初めて市長は単なるイデオロギーで反対しているのではなく、十分に根本原因を勉強してでの反対主張であるのがわかり、実際その通り事故が起きました。

 普通は、なかなか「首をかけてもいい」という言葉は、思っていても言えなく、そこまで断言するのはコンジョの有る人だと思う。

マスゴミのデマ

 「原子力船「むつ」の軌跡」を読んでいて、放射線が漏れた時に「飯を炊け」という事が記載されており、そおいう事が有ったのかと初めて知りました。

 このクソ忙しい非常時にどうして?・・まずは腹ごしらえという事かな?・・と思って読み続けると「ご飯粒で放射線が漏れた箇所を塞げば防げる」という事らしかった。「むつ」原子炉室、むつ科学技術館、田名部海辺33観音

 しかし、常識的に考えても目に見えない放射線が漏れている箇所をどおやって探し、飯粒程度で放射線を防げるのだろうか?

 これは完全なるデマで、そおいう事実は無かったと本に書いてありました。

 これを書いてる時に本の該当頁を探しましたが、数行の記載だったので、どの頁に記載されていたのか見つけれませんでしたが、当時のマスコミが面白・オカシクするために流したデマでしょうなぁ。

 同様に「むつ」が母港に帰るのを阻止するため、漁船が土嚢で岸壁付近を封鎖しようとしました。(結果的には実施されなかった)

 ふうむぅ・・・戦術的には旅順港封鎖と同じで、反対漁民側としては良いアイデアじゃなぁ・・と思って本を読み続けました。

 その後ネットで調べてた時に、これを提案して漁民を焚きつけたのは東京から来た大手マスコミと書いてあるのを見つけました。

 このマスコミによる焚きつけが本当かどうかは、今一つ確証は持てませんが、どうもマスコミつうヤツらは、そおいう事をやって焚きつけ煽り立てて記事にする、どうしょうもない連中だと思ってます。「むつ」原子炉内部、むつ科学技術館、田名部海辺33観音

 σ(*_*)の前職時代の時、ある施設を作るため地元民に十分説明して皆の了解を得たにもかかわらず、後から一人の地方新聞記者が地元民に「公害になるぞ」と言い触らして反対運動を煽り立てた事がありました。

 「公害対策は、してある」と記者にも地元民にも十分に説明したのに、記者が言い触らして煽るもんだから、だんだんと住民も「そうかなぁ・・」と思い始め、せっかく数千万円かけて作った施設が地元住民による反対のため、その用をなさなくなり税金の無駄使いになっちゃいました。

 その記者の名前を今でも覚えていますが、施設設置のために住民と十分に話し合いながら、一生懸命に努力して来た担当者はどんなに無念な思いをした事か、あの記者はわかるかなぁ・・わからんじゃろなぁ。

 きっと正義を実行したと誇りに思い、今も自己満足してると思う。

船乗り気質

 漂流中に全日本船員組合が「乗組員を下船をさせる」という事が記載されてました。

 漂流してからの船長は、胃が痛くなるほどの重圧と責任を感じていたと思い、放射能が漏れ、この先どうなるかわからんし、いつ入港できるかも、わからん状態ですからねぇ。スクリュウ・むつ科学技術館、田名部海辺33観音

 ただσ(*_*)も、昔わずかな期間ですが船に乗っていた事があるので「船乗り気質」というのは、チビッとはわかってるつもりです。

 「船乗り気質」つうのは、絶対に困っている仲間を見捨てない、どんな事をしてでも助ける・・という気質で、今はどうかわかりまへんが当時は「舟板一枚下は地獄の底」と度々言われ、船が沈む時の生死は皆一緒だと言われ、その覚悟は自然に有りました。

 なもんで、極端に言えば「お前の物はワシのもん、ワシのモンはあぁたのもん」というように仲間意識が非常に強いのです。

 σ(*_*)は普通の民間企業にも勤めた事も有りますが、民間企業以上に船は仲間意識がもっと強かったように思う・・・もっともσ(*_*)が乗った船だけだったのかもしれまへんが・・。

 で、本を読んでいて船員組合から下船指示が出た時、乗組員達は、その時にどう思ったじゃろか?と思いましてなぁ。

 わあぁ~い、これで帰れると喜んだじゃろうか?船尾、むつ科学技術館

 普通の場合ならば喜んだでしょうが、いろんな思惑で漂流し、困難な状況に陥いって漂っている船の現状を知りながら、船を見捨てて下船するという事に対しては、もんのすごい葛藤があったと思います。

 本には、そのような心理的な事に触れず記載してありませんでしたが、たぶん船を降りる人も残った人も、いろんな思い等が有ったと思う。

 それにしても1月半の間、困難な状況で漂流を続けながらも船を維持し、また船員組合の「船長を含めて総員下船、船体放棄」という主張に対し、「最低限の保船要員を残す。」と最後までガンバッタ船長は、まさに船乗りの鏡で責任を全うした人だと思う。原子力船「むつ」模型、むつ科学技術館、田名部海辺33観音

 理由はどうあれ、船員組合が主張する「船体放棄」という事は、船乗りにとっては家族・兄弟を見捨てるのと同じ思いで、また心情的な事だけで無く、そんなに簡単に事が済むものではない事を船員組合も知っているはずです。

 船長としては、船体放棄して保船する人も無く漂流させ、その船の処置も決まらないのに下船するという無責任な事は、船長の立場としては絶対に出来なかったと思う。

 船乗りの組合である船員組合ならば、当然そおいう事は百も承知のはずだったと思うが・・・。

危機管理

 「原子力船「むつ」の軌跡)」の著者は自分の苦労を語らず、淡々と国・県・漁業者等との折衝状況を記載しています。

 しかし、その場に立ち会い、現場と上部組織からの板挟みに合い、たぶんこれまた胃が痛かったと思いますが、そおいう事を一言も書いてないのがエライ。

 本を読んでいてσ(*_*)がその立場だったら、ノロイゼーになって鬱になってたかもしれん。

 σ(*_*)も県・漁業者達と折衝した事がありますが、何気なく一度口から出た言葉でも、後から絶対に訂正できません。

 「あの時、あぁたは、こお言ったじゃありまへんか」と必ず言われます。

 白状しますと前職時に、実はそれでシマッタと思った事が一度有り、こちらの意に添わなかったのですが、小さい事だったので、そのまま相手の言うまま事を進めました・・すんまへん。

 その他、想い出に残る折衝例として、上部組織が勝手な事を言い出した事が原因で、漁業者側と感情的にモメて、コジレまくり相手側は絶対に「うん」と言わず、上部組織から「何とか解決しろ」とせっつかれました。

 話し合いの席に原因者である上部組織に「会合の席に、だれか責任者として同席しろ」と言ったのですが「どうのこうの・・」と言って逃げちまい、上役である所長にも同席を求めたが、こいつも「ああだこうだ・・」と逃げちまいやがって・・・

 まったく、どいつもこいつも・・・

 それならば自分のやり方で解決しようと思い、一人の部下だけを連れて地元漁業者へ説明しに行き、素直に当方組織の非を認め、席から立ち上がり「組織を代表して私がこの通り謝ります。誠に申し訳ありませんでした。」と言って深々と3秒ほど頭を下げました。

 最初の時はキツイお言葉も頂きましたが、謝った時点から相手側もメンツを保ったと思ったのか、それとも誠意を持ってこちらの事情などを説明したのが功をなしたのか、最終的には納得してくれ無事に解決し、帰る時には「ご苦労様でした」とまで言われちゃった。(^O^)ダハハハ・・・

 上部組織も所長も、だれもが簡単に解決しないだろおと予想していたのですが、一発で解決して来たもんだから・・・ざまあみろってんだ。(^O^)ワッハハッハッハ・・。

 たぶん上部組織も所長も、この「誠意をもって謝る」という考えを全く持ってなかったのだと思う。

 タテマエ・メンツを捨て、まずは謝る所が有れば素直に謝り、誠意を持ってこちらの事情を話せば、こおいう折衝は解決するんだなあと、この時につくづく思いました。

 原子力船「むつ」漂流に関しても、「謝る」と言う事が見受けられなかったように思い、著者もおそらくσ(*_*)が折衝した以上に数多くの困難な対外折衝をして来たと思います。

 ついでだからオマケに、σ(*_*)の危機管理というか対外折衝例をもう1つ

 上部組織が管理する建物を地元住民が何とかしろと言ってるので、現場に近いからという理由だけでσ(*_*)に事情を聞きに行かされました。

 行ってみると10人ほどの住民達が待っており、「何年も陳情してるのに、いつまで伸ばすんじゃ」とボロクソに非難轟々「ギャアァ~ギャアァ~・・」と言われましたが黙って言い分を聞きました。

 一通り言い分・事情を聞いた後「決して責任逃れをするつもりは有りませんが、こちらの事情も聞いてください」と前置きして

 「私は同じ組織の者ですが、この建物の管理は上部組織がしており、私の方では何の権限も無く、どうする事もできません。

 今回ここに立ち会ったのは、現場に近いから事情を聞いてくるように上部組織から言われたので来ただけです。

 だからと言って、このままにしておくつもりはなく、あなた方の言い分・事情は必ず上部組織に伝えます。

 どのような回答・結果になるかはわかりませんが、とにかく上部組織の担当者名と何らかの返事を貴方達にするように伝えます。

 もし、二週間待っても返事が無い場合は、私に連絡してください。

 その時には私が上部組織に対して、皆さんに返事するように何度でも厳重に言い伝える事を必ず約束します。

 どうか私が責任逃れをしてるのでは無い事だけでも、承知してください。」


と言うと住民もわかってくれ、解散する時には一番ボロクソに言ってた人が近寄ってきてボツンと「先程はキツイ事を言って悪かったなぁ」と言ってくれました。(^O^)

 はい、結果は丸く収まり、上部組織のエライ人から「今回の件では、すまなかった。」と直々にσ(*_*)に慰労の電話がありました。

 実は、σ(*_*)がこのように上手く危機管理が出来たのは、「佐々淳行」氏著者の「危機管理」という本を読んでいたからです。

 世に危機管理の本は多数出てますが、「佐々淳行」氏の本だけは中堅・幹部の人に、ぜひ読んで欲しいお勧めの一冊です。


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 恥ずかしながら「YouTube」に尺八独奏「阿字観」を載せており、聞いて頂ければ泣いて喜びます


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